@KAITOだらけのボカロ一家

□KAITOだらけのボカロ一家・その25
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KAITOだらけのボカロ一家・その25

こんにちは、または初めまして、次男カイトです。
今日は一段と寒いですね。天気予報で言っていました。最高気温が昨日より2度下回っているそうです。
そんな中、三男カイトが、ベランダに出て空を見上げたまま、戻ってきません。あまりにも遅いので、気になってベランダに続く窓を開けると、途端に風が舞い込んで来ました。後ろでマスターが寒い、早く閉めろと言ってきます。
窓を閉めて、三男カイトに近づくと、三男カイトは僕に気付かず、ずっと空を見上げてポカンとしています。
「どうしたの?」
「え、あ、兄さん。なーに?」
「いや、遅いから」
「え?そんなに遅かった?」
「うん」
三男カイトは時間の経過に気付いていなかったようです。もう2時間は経っているのに。何にそんなに夢中になっていたんでしょう。
三男カイトの視線を辿って、空を見ても、何もありません。あるのは灰色の空と、灰色の雲だけです。
「何見てたの?」
「お空!」
「空?」
空に何があるのでしょう。ずっと見ていても、やっぱり何もありません。
「さっきまでねー、雪が降ってたの」
「雪が? へー……」
もう止んでしまったんですね。降っていたなんて、全然気付きませんでした。
「今、兄さんが雪が降る歌、歌ってるから」
「そうだね」
マスターが作った、マスターには似合わない綺麗な曲。雪が降る世界の中で、二人っきりで愛を育めたなら、どんなに幸せかな、という歌です。
マスターにそんな情緒があるとは到底思えませんが、確かに、そうなら素敵なことかもしれません。
雪が降って、積もると、音が無くなるんですよね。全部吸収されて。
綺麗だと思うこともあるけれど、音の無い世界は嫌いです。僕たちVOCALOIDの存在意義だから。
でも、たとえ世界に音が無かったとしても、好きな人と二人きりだったなら、それは素晴らしいことなのかもしれません。
僕は恋愛というものはまだ理解できませんが、ドラマや映画の恋愛はとても素敵だと思います。複雑に事情が込み入ってしまったりするものよりも、ただ相手のことを純粋に愛している、そんなラブストーリーは、見ていて幸せな気分になります。
「オレは雪、好きだよー」
「そう?」
「うん!だって積もると、雪だるま作れるもん!」
三男カイトらしい理由に、微笑まずにはられませんでした。
「そうだね。今年も積もるといいね」
「うん!」
去年、ミクや近所の子供たちと一緒に雪だるまを作っていたところを思い出しました。たまに盛大に積もると、それはもう子供たちの格好の遊び場になって、マンションの駐車場や中庭で小さなものから大きなものまで、色々な大きさの雪だるまが地面に座っていました。
今年はまだ積もっていません。まだまだ寒い時期は続きますから、いつか積もる日も来るでしょう。その時はまた、雪だるまが沢山立ち並ぶことになるでしょう。
音が無くても、沢山並ぶ雪だるまが見れるなら、積もるのもいいかもしれません。
僕たちは寒さなんて関係ありませんしね。
「ねー兄さん」
「んー?」
「積もったらさー、雪合戦したい!」
「えー、それはちょっと無理かな……」
「なんで?」
「僕は運動が苦手だから、絶対雪まみれにされちゃうよ」
去年か、一昨年か、記憶野を探っていないので分かりませんが、一度家族全員で雪合戦をして、僕だけ何故か雪玉を集中して投げられて、雪まみれになって掃除が大変だったんですよ。
わざわざお風呂に入って全身洗って汚れを落とさないといけなくなって大変でした。もうこりごりです。
それに兄さんやマスターが投げる雪玉は、中に何も詰めてないはずなのにすごく痛いんですよ。全身青痣だらけになって、修復が終わるまで痛かったです。うう。
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