毛利さんちのボカロ一家

□徒然ログ
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ソフトクリームを食べるカイトってどうなん

買ってやったソフトクリームを美味しそうに食べるカイトを見て、昔見た動画を不意に思い出した。
「なぁなぁカイト」
「はい、なんですか?」
歌の調整の合間、今は休憩中。ヘッドホンを外して、カイトににじりよる。
カイトは両手でソフトクリームを持ったまま、小首を傾げた。
「ソフトクリーム、好きか?」
俺の質問に、カイトは少しも考えたりせずすぐに笑顔で頷いてくれた。
「はい。とても美味しいです」
「そっか」
カイトの答えに、どこか納得出来ずに曖昧に頷く。そんな俺の様子にまた首を傾げて、カイトは不安そうな顔をした。
「あの……どうかしましたか?」
「んー。実はな」
昔、笑顔動画を巡回してたとき、一つのVOCALOIDの動画を見つけたんだ。俺はそのときVOCALOIDに対してあまり興味を持っていなかったんだが、なんつーかタイトルホイホイだった、つーかな。まあ、某熱血ラブコメのオープニングをVOCALOIDで描いてみた、っていう内容なんだが。それを見事に一本釣りされて見たんだよ。
その動画で、KAITOがそれはもう声も高らかに
「ソフトクリームは邪道だ!」
って言ってたもんで。
KAITOがアイス好きとかそのときは全然知らんで、へー邪道なんだどうでもいいなー、程度に思ってたんだ。
そのことを思い出して、今目の前で美味しそうに幸せそうにソフトクリームを食べるカイトに違和感を感じたというか。
「お前的にソフトクリームって邪道?王道?」
「はぁ……えぇと……邪道とか、王道とか、よく分かりませんが……美味しいとは思います」
「そうか?」
「はい」
「そうか……」
邪道とかそんなん関係なしに好きなのか……じゃあソフトクリームは邪道云々はあの動画のKAITOだけの個性だったのかな。
「じゃあソフトクリームってアイスなの?」
「え……と……それは違う……と思います」
アレ?
「え? なんで」
ソフトクリームはアイスだろ。
しかし、いつも流され体質のカイトが、俺がなんと言おうとこればっかりは譲れないと断固として違うと言い張る。
「違います。ソフトクリームはアイスじゃないです」
ぷるぷる首を振って全否定する様子に、疑問をおぼえる。何がお前をそこまでさせているのかと。
「どこが違うの?」
「だって、ソフトクリームって柔らかいじゃないですか」
「は?」
「柔らかいってことは凍ってないじゃないですか。だからアイスじゃないです」
「……………」
やたら真面目な雰囲気で、滅多に見せない凛々しい顔つきで、うちのカイトがなんか変なこと言ってる。あれー、なんでだろー。
「ただ甘くて冷たいだけでアイスの仲間に入ろうだなんて不届きにも程があります。笑止千万、とんだ無礼者ですよ」
……ここまで何かに熱く打ち込むカイト、歌ってるとき以外で初めて見た。しかもそんなこと言いつつしっかりソフトクリームは食べてるし。何事だ。
「で、でもソフトクリームは好きなんだよな?」
「はい。美味しいです」
そう言って、今の今までキリリと引き締まっていた顔が、ふんわりとした笑顔になった。なんだこの変わり様は。
「……俺にはよく分からなかったんだけど、分かりやすく言うとどうなんの」
「そうですね……ミク風に言うと、ネギと玉ねぎくらい違います」
「あぁー……そうなんだ……」
そりゃ確かに違うなぁ。よく分からんけど。
「………でもソフトクリーム好きなんだよな?」
「ミクだって玉ねぎは大好きじゃないですか」
「……………」
分からん……。どういうことだ。
「甘くてとっても美味しいです。ありがとうございます、マスター」
「あ、ああうん。どういたしまして……」
そうニッコリと微笑まれて、俺は疑問とかなんとか色々を飲み込んで我慢するしかできなかった。
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