毛利さんちのボカロ一家

□徒然ログ
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GWに家族会議

今年もゴールデンウィークがやってくるわけなんだが、どうにもこうにも仕事の都合で普通に土日しか休みが取れなかった。まあ毎年のことだ。土曜日に休みが取れたのは、むしろ奇跡に等しい。
「連休が取れたの? なら温泉でも行かない?」
そんな金はないし車も無い。大体、今から予約取ったってどこも空いてるわけがない。
「ゆーえんち! 遊園地行こー!」
そんな金もない。それに行楽シーズンに遊園地って自殺行為だぞお前。待ち時間パねぇぞ。
「じゃあ……実家にでも帰ったら?」
それは盆に帰るから嫌だ。いちいちガキどもの世話を焼く羽目になるのは少ない方がいい。
「もー! あれも嫌、コレも嫌、って! じゃあ毛ちゃんは何がしたいの!?」
「そうだなー。家でゴロゴロしたい」
メイコとミク、2人から鉄拳とハイキックが飛んできた。
「ぬおー!」
いてぇ! 超いってぇ! 今骨がミシッて鳴ったぞ!
お前らVOCALOIDなのになんでマスターを攻撃してくるんだよ! 危ねーな!
「んーとね、女の子のVOCALOIDは、マスターが男だった場合攻撃してもいいようになってるの。嘘だけど」
「即行で嘘吐くなよ!」
「っていうか折角の休みなのに家でゴロゴロって……そんなのやーだー!」
そう叫ぶと、ミクはパタンと倒れて床で駄々をこね始めた。子供かお前は!
「何言ってんだ。折角の休みだからゴロゴロすんだよ。もーマジで肩とか腰とかバッキバキなんだから労わってくれや」
「そんなのマスターの都合よ」
「ひっど! お前には血も涙もないんか!?」
メイコの奴、しれっとした顔で、結構酷いことをさらっと言いやがる。畜生、とにもかくにも、俺はこの連休を無事に平和に過ごしたいんだよ。連休なんて取れるのこんなときくらいしか無いんだから、少しは休ませてくれよ。頼むから。
「むー。お兄ちゃんもなんか言ってよー。毛ちゃんが思わず遊園地に連れて行ってくれるようになることをー」
「えーと……うーん……」
カイトが困ってるからそういう事を言うなよ。カイトが俺に鞭打つようなことを言うはずがないだろ。
思ったとおり、カイトは相変わらず困ったように眉を下げたまま、俺の意見に賛成してくれた。
「マスターは私たちの為に働いてくれてるんだから、マスターが休みたいって言うなら一緒に休もうよ」
ね? とミクとメイコに向けて微笑む。おおお。流石カイト。ええ子や……!
ミクは唇を尖らせたまま、メイコも不服そうな顔で黙り込む。明らかに納得してねぇな。まあ、こいつらは毎日が休日みたいなもんだから、たまには家でくさってないで遊びに行きたいっつー気持ちも分からんでもないが。
悪いけど俺は正直本気でキツいんで、なんと言われようと休むぞ。家でゴロゴロして疲れを取るんだ。
「えー……でもさぁ、そんなんでお兄ちゃんはいいのー?」
ミクが駄々をこねた体勢のまま、カイトに向けて不満そうな顔をする。カイトは頷いた後、
「それに、外に遊びに行くよりも、たくさん曲を作ってくれた方が嬉しいから」
「あ! うん、そうだねー!」
ガバ、と起き上がり、ミクはそれはもう盛大に頷いていた。メイコも、
「ああ、それはそうね。最近忙しいって全然構ってくれなかったんだもの。ねえ、マスター?」
と言いつつ俺を睨んでくる。笑顔で。こえぇぇ。
まあ、そうだなあ。最近仕事の方で納期が近かったから、特に忙しくてこいつらに歌を作ってやるどころか、構うこともなかなか出来なかった。
あー、それでストレス溜まってたのか。そりゃ悪かった。
「わかったわかった。じゃあ連休中に1人に1曲作ってやる」
「ほんとー!? わーい!」
「ぐぇっ」
おわびの気持ちも込めてそう言うと、ミクが飛び掛って抱きついてきた。
あ、あばらが……ホンとにミクの奴はなんでこんなに乱暴なんだ。嬉しいのは分かったから少しは自重しろお前は。
「楽しみにしてます。でも、あんまり無理はなさらないでくださいね」
何故か申し訳なさそうな顔をして、カイトがそう言ってくる。ありがとなー。お前だけだよ、俺の心配をしてくれるのは。
とりあえず、どんな曲を作るか考えないとなー。


「作戦せいこーぅ!」
「マスターってば意外と単純なのよねぇ」
「いいのかなぁ……」
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