毛利さんちのボカロ一家

□徒然ログ
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蛇足

……ところでこの手はいつまで握ってればいいんだろうか。
カイトは相変わらずニコニコ笑ってるし。
「作業に戻るから、手離してもいいか?」
「手?」
カイトは首を傾げて、それから一気に首まで真っ赤になって、払うように手を離した。
な、なんだ。どうした。
いきなり振り払われてちょっとショックだった。ええー。なんだよ。
「ご、ごめんなさい! ごめんなさい! え、えと、ええ、あの……」
しどろもどろになって、両手を握ったり離したり、腕を振ったり、せわしないことこの上ない。分かった分かった。よく分からんけど分かったから落ち着け。もちつけじゃなくて落ち着け。
「落ち着けって、ホラ」
またさっきみたいにカイトの頭に手を乗せて、撫でてみる。すると、カイトはぐらりと揺れた。おい。
「か、カイト?」
「はぅ……だ、大丈夫です……」
「嘘つけ」
「うぅ……」
ぺたん、と床に尻餅をついたカイトを見下ろす。その顔はやっぱり真っ赤だ。
……これが可愛いと思うのはやっぱり間違ってるよなぁ。いやでも可愛いような。いやいやいや。待て俺。超待て。
ってか、今頭撫でられて腰砕けたのかこいつは。なんでだ。俺なんにもしてないのに、罪悪感が半端ねぇんだけど。
「だ、大丈夫ですから……あの、気にしないで作業を……」
この状況でそれを言うか。今は作業どころじゃないだろうJK。
思わずため息をつく。へたり込んだカイトの両脇に手を差し入れる。
「ま、ますたぁ?」
「オラ、立て。で、とりあえずそこにいろ」
で、引きずってベッドに放り投げる。カイトが軽いから出来る芸当だな。軽いつってもまあ結構あるけど。40kgくらいか。
ベッドに放り投げられたカイトは、うひゃあ、とか変な悲鳴を上げて羽毛に沈んでいった。
「そこで大人しくしてろ。寝ててもいいから」
「……はい」
枕に埋まった顔の辺りから、くぐもった声が聞こえてきた。
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