@KAITOだらけのボカロ一家

□KAITOだらけのボカロ一家・その6
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皆さんこんにちは、長男カイトです。次男カイトが忙しいので選手交代です。
カイトは俺が弱ったマスターに日頃の仕返しをするんじゃないかと心配していましたが、しょうがないですね。
するに決まってるじゃないですか。何を今更。
今までの鬱憤をどうにかして晴らさないと、ストレス溜まって仕方ないんですよね。
カイトやバカイトをいじって遊ぶのも飽きてきたし、丁度いいです。
俺を怒らせるとどうなるか、マスターには存分に理解していただきましょうか。
マスターの部屋のドアを開けると、バカイトがベッドに寄りかかって歌を歌っていました。どうやら子守唄のようです。いつもはバカイトですけど歌となると人が変わったようになりますね。認めるのは癪ですがいい歌です。
「…あれ、兄ちゃん?どうしたの?」
「カイトに看病を頼まれた」
「わー!やった、兄ちゃんなら風邪の治し方いっぱい知ってるよね?」
無邪気に喜ぶバカイトは、いつ見ても能天気すぎてイラッとします。でもその言葉を聞いて少し閃きました。
「ああ、そうだな、風邪に良く効く民間療法があるぞ」
「みんかんりょーほー?」
明らかに分かっていない様子ですが、とりあえずマスターが元気になるならなんでもいいと思っているバカイトです。すぐに俺の言葉に乗ってきます。
「ああ、まずはだな、ネギを用意するんだ」
「ネギ?ミク?」
「ミクはいい。ネギだよネギ、長ネギ」
ツインテールの妹機がネギ好きなので、芋づる式に連想したようですがミクはいりません。振り回すわけじゃないんですから。
さて皆さん?風邪っ引きのマスター、民間療法、長ネギ、とここまでくれば連想ゲームも簡単すぎますよね?
ええそうですよははは。皆さんご察しの通り。
バカイトにネギを持ってこさせ、教えてやります。
「このネギを細かく刻んで布に包み、それを首に巻くと咳や喉に良いらしい」
「おぉ〜!えっとじゃあ包丁とかもいるよね」
そう言ってまたキッチンにとって返ろうとするバカイトの肩を掴んで引き止めます。違うぞバカイト、そんなまともなことするわけないだろう?
「待てバカイト。それよりもっと効くのがあるんだよ」
「ふぇ?もっと?」
俺の言葉に目を輝かせて先を促すバカイト。いや本当にバカイトですね。
「実はな、ネギの効能をより早く実現させるためには、粘膜から直接吸収させる方が手っ取り早い。どうすればいいと思う?」
「うーん…食べちゃえばいいんじゃない?」
「ならお前食ってみろ」
普通すぎる答えに納得いかないので、生ネギをバカイトに無理やり食べさせてみました。
「うわっ!辛っ!苦っ!ごめんなさいー!!」
「ふん」
生ネギなんて食えるのはあの味覚破壊されてる妹くらいのもんだろ。もしくはそれに相当するよっぽどのネギ好きか。
「あうぅ…ネギの味が取れないよー…」
「分かったか?確かに口から入れるのが一番いいけど、そんなの無理だ。正直生ネギは食べるのが辛い。ならどうする」
「うー…わかんない」
はい皆さん。お待たせいたしました。
「ケツに突っ込むんだよ」
「え」
バカイトが一瞬固まりました。それから恐る恐る長ネギを見て、それから高熱でうなされているマスターを見て、そして最後に俺を見てぶるぶると強く首を横に振ります。
「だ、駄目だよ!そんなの痛いよ!」
「何言ってんだ、これが一番効くんだよ。つーわけで行け」
「えぇー!?」
オレが!?と驚くバカイトに、無理やり長ネギを持たせます。なんで俺がやらなきゃいけないんだよ。
「ほら、マスターに早く良くなって欲しいんだろ?なら一肌脱いで見せろ」
「う…うぅ〜…」
バカイトは不安そうに長ネギをギュウ、と握り締め、オロオロとマスターと俺を交互に見ます。
「ほ、本当にやらなきゃ駄目…?」
「ああ」
頷くと、意を決したのかバカイトがマスターをじっと見た後、立ち上がりました。
「ご、ごめんなさいマスター…!」
毛布をはぐと、マスターが目を覚ましたのかうっすらと目を開けていました。
「ん…カイト?寒い…」
「ごめんなさいマスター!」
「は?なに…って何し…」
寝起きと風邪のせいで頭が回らないらしく、バカイトがズボンを脱がそうとするのにも無抵抗です。うわー、普段だったら逆に脱がそうとしてくるのでなんだかとても新鮮です。
「ね、ね、ネギをおしりに刺すと、風邪が治るんです!」
「はぁ…まあそうらしいな…」
「だから、オレが刺してあげます!」
「あぁ?いやそれは」
「大丈夫です痛くしません!」
「いやしなくていい…っていうか音量下げて…頭痛い」
「大丈夫です!」
どうしましょう、笑いを堪えるのが大変です。バカイトが必死なのも面白いですが、マスターが無抵抗っていうか抵抗できないのが見ていてとても愉快です。
あー、あれですね、眼鏡が欲しいです。今なら鬼畜眼鏡になれそうな気がしないでもないです。
さて、いよいよマスターのパンツが下ろされそうになった時、
「マスター?なんだか騒がし…って何してるの兄さんたち」
カイトが生姜湯を乗せた盆を持って部屋に入ってきました。俺たちの状況を一瞬で把握したらしく、半目で俺を見下ろしています。
やっべ。見つかった。
「…まさか兄さん、さっきよろしくって言ったの忘れた?仕返ししないようにって心を込めて言ったんだけどな?」
「あーまあ、そうだったかなー」
「風邪引いたマスターに何変なことしようとしてるの?マスターのこと心配じゃなかったの?」
「心配はしてるぞ、一応」
あーヤバイ、カイトが本気で怒ってます。こうなると俺でもちょっと怖いです。
「じゃあ今すぐカイトをマスターの上から退かしてくれないかな。あと二人とも今日のご飯抜きね」
「ええ!?」
「ふぇっ!?なんでぇ!?」
「あと二人ともすぐこの部屋から出て行って。マスターの看病の邪魔」
絶対零度の眼差しで見つめられ、背中を嫌な汗が伝っていく感じがしました。
「バカイト、行くぞ」
「ふぇ!で、でも風邪治さないと…」
「いいから」
長ネギを持って渋るバカイトを引きずって、部屋から出ます。ああなるともう手がつけられないんですよ、オカンは怒らせると怖いんですから。
しかし仕返しの邪魔が入りましたね。しょうがない、マスターのパソコンのいかがわしいファイルを全部消しておきますか。今のうちに。
「に、兄さん怒ってた…ご飯抜きって…邪魔って…」
震えるバカイトは相当ショックだったようで、今にも泣きそうです。泣かれると面倒ですね。ああもう。
「謝れば許してくれるって。お前はマスターの風邪を治したかっただけなんだから」
「う…ほんとう?」
「ああ」
まあ本当かどうかは知りませんが、カイトのことですからバカイトが謝れば簡単に許すでしょう。問題は俺です。
あー、後が怖い。大丈夫でしょうか、俺。
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