@KAITOだらけのボカロ一家

□KAITOだらけのボカロ一家・その7
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毛利さんのVOCALOIDの歌を聴いて、マスターはなんだか面白くない、というように口を尖らせていました。
「んだよ、お前結構いい歌声作ってんじゃん。つーわけで更に調教してやるからお前のカイトを貸せ。ミクを優先するお前にカイトは任せてられん」
「なんでだよ。俺のカイトなんだから俺が調整にするに決まってんだろうが。っていうか調教って言うな。お前が言うとなんかえげつない」
「安心しろよ、身も心も完璧に調教してやるから」
「だからやめろっての!」
毛利さんがミクの耳を塞いでいたので、僕もカイトの耳を塞ぎました。なんとなく聞かせちゃいけない気がする。うん、君は汚れないで清いままでいてほしい。
「…あの、カイトさん?どうかしましたか?」
「いや、ちょっと危険人物がいたから」
「?」
僕の言葉に首を傾げるカイト。うん、綺麗なままで居て欲しい、本当に。
「ご馳走様でした」
唐突に響いた声に、僕たちは一斉にそっちに注目しました。注目されたのは長男カイトで、手を合わせるその目の前には汁まで綺麗に平らげたお椀が。
「あと一体KAITOが増えようが増えまいが知りませんが、とりあえず食べたほうがいいですよ、マスターさんたち?」
そう言って、お椀と箸を持ってシンクに向かう長男カイト。言われて、それぞれのお椀を見たマスターと毛利さんは。
「あーっ!!の、伸びとる!!」
「か、カイトの手料理がぁぁぁあ!!てっめぇ毛利!マジで表出ろ!粛清してやる!」
「おー上等だ!おめーが色々言ってこなけりゃー肉がふやけることもなかったんだってのに!」
「それはこっちの台詞だ!このゴリラ!オラ着いて来いやぁ!」
「ふざけんな!貧弱眼鏡が調子乗ってんじゃねーぞ!」
そう言って、二人は立ち上がったかと思うと、いきなりストンと腰を下ろしました。
「あれー?行かないんですか?」
「毛ちゃん、喧嘩しないの?」
三男カイトとミクがきょとん、としていると、二人は殺気立つ視線を隠すこともせず二人を睨みつけ、
「食べてからに決まってんだろ!!」
と言ってふやけたうどんをすすりました。
…いえ、嬉しいんですけど、ね?伸びきったうどんでも美味しいと思ってくれるんでしょう?
でもふやけてからそんなにかっこまれると、少し複雑なものが…
そして、二人同時に汁まですすり終わって、お椀を空にすると、今度こそ二人して外に出て行きました。そして外から互いを罵りあう言葉とともに、殴り合っているらしい鈍い音が。
「…ほどほどにしておいて欲しいわ」
「本当に」
メイコと顔を見合わせて、肩を竦めました。
やっぱり、VOCALOIDと毎日顔をつき合わせている人間は幼くなるっていう発表とか論文とかないんですかね。本当にありえそうなんですけど。


End.
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