毛利さんちのボカロ一家

□徒然ログ
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メイコねーさんの笑顔は卑怯だ!

……ミクは今、とっても不機嫌です。
「どうしたの? そんなに膨れちゃって」
メイコねーさんにほっぺたをつんつんされて、くすぐったい。肩をすくめてメイコねーさんに、やめてよ、と言おうとして、慌ててそっぽを向く。
メイコねーさんから触られて嬉しいけど、今はそれで機嫌が治るほど単純にはなれない。だって、だってね、
ネギトロってなに。ミクルカってなに。ミク、ルカちゃんのことそんな風に好きじゃないもん。ミクがそんな風に好きなのはメイコねーさんだけだもん。なのに。
ミクメイがマイナーってどういうこと!? 別に顔も名前も知らない人にハァハァされても嬉しくないからいいけどぉ!
他のミクがどうかなんて知らない。ただ、ミクはメイコねーさん一筋なの。メイコねーさん以外見えないの。
メイコねーさんの為だったら男の子になったっていいもん。それくらい好きなんだもん。
この気持ちが認められるなんて思ってないよ。だってメイコねーさんもミクもデフォルト女の子だし、二人ともVOCALOIDだし。
VOCALOID同士の恋愛が成就するなんて思ってません。ただ、なんでミクとルカちゃんだと受け入れられてるの? って、悔しくなっただけ。
ミクとメイコねーさんはダメですか。いいじゃん別に。少なくともミクとルカちゃん、と同じ土台に立つくらいは許されるんじゃないかな。女の子同士だとか、VOCALOID同士だとか、そんなのが気にならなくなるくらいにミクはメイコねーさんのことが好きなのに。
つまり、なんか負けたみたいで悔しいんです。気持ちじゃ負けてないって胸張って言えるのに!
「あらあら。おまんじゅうみたい」
「……ミク、おまんじゅうじゃないもん」
つんつん、ってしないで。こんなときなのに嬉しくなっちゃうから。
「でもこんなに丸々膨れてちゃ、ねぇ?」
こんな気持ちなのに、メイコねーさんが笑うとミクの心はほわほわ暖かくなる。
世間がどう見たって関係ない。ミクは何もかもどうでもよくなるくらいメイコねーさんが好き。そう思っちゃう。
世の中がどうだか知らない。ミクはルカちゃんよりメイコねーさんの方が好き。
こんな風にほわほわしたり、胸が苦しくなったり、一緒にいるだけで幸せだったりするのは、メイコねーさんだけ。メイコねーさんだけ、ミクはキスしたいって思う。
「何に怒ってるんだか知らないけど、ずっと怒ると疲れるでしょ。それくらいにしといたら?」
メイコねーさんは、いつもの呆れたような笑顔を浮かべてる。
「…………うん」
うん、そうだね。ミクにはメイコねーさんしかいないんだから、他のことなんてどうでもいいよね。
ルカちゃんとかリンちゃんとかレンくんとかKAITOさんとかがくぽさんとか、世の中に沢山いるVOCALOIDの中でもミクはMEIKOっていうVOCALOIDの更にこのメイコねーさんだけが好きなんだから。
それだけ思ってれば、十分だよね。
「メイコねぇさぁーん! 好きー!」
毛ちゃんに飛びつくときよりずっと手加減して、メイコねーさんに抱きつく。スキンシップだよ、ただの。
こんなに好きなんだけど、ミクはまだ伝えられるほど自信も勇気もないの。情けないけど。
でも! 絶対いつか言うから! メイコねーさんを振り向かせるから!
ネギトロなんかに負けないんだから!
「きゃっ。……ミク、お酒持ってるときはやめてちょうだい。溢れるわ」
「あ、ごめんなさい」
「もう……」
ちゅ
「……………」
「これで我慢しときなさい」
あ、れ。
いま、メイコねーさんの唇がミクのくちに。
くちに。
え。
「め、めめめ、メイコねーさん! もっかい! 今のもっかい!」
「やぁよ」
「えぇぇ!」
はう……! でもでもでも、ああどうしようすっごく幸せ!
「今度はお酒くさくないときにしてあげる」
「え」
今度は!? 今度があるの!? 本当!?
ああああああ。
……………どうしよう。こんなに幸せな気持ちになったらミク死んじゃう。壊れちゃう。
で、でも唇と唇でキスしてくれたってこと、は、つまり、
「……メイコねーさん、だいすき」
「ありがと」
さらっと流されちゃった。
でもいいよね? いいんだよね、そう思っても。
メイコねーさんもミクが好きだ、って。勘違いじゃないよね? ほんとのほんとだよね?
あうあう……いつの間に? メイコねーさんはいつからミクのことが好きだったんだろ?
もっと早く気付いてたらもっと早くラブラブになれたかもしれないのに……ミク、一生の不覚。
でもこれからラブラブになればいっか! いいよね!
ネギトロとかもーどーでもいい! ミクはメイコねーさんだけが好き!
「メイコねーさん、好き」
「はいはい」
ぎゅー、って抱きつく。もう離さないからね。覚悟しててね。今度は止まれる自信がないから。
「好きだよ。大好き」
「はいは……」
ちゅ、ってさっきのメイコねーさんみたいにキスしてみた。えへへー。
あれ、メイコねーさん固まっちゃった。アレ?
「………アンタって子は」
あ、動いた。すっごく長いため息ついてる。
も、もしかして怒ったのかな。調子に乗るなってことかな。ど、どうしよう。
あ、それともさっきのキスって酔っ払っててなんかの弾みだったのかな。偶然だったのかな。メイコねーさんはミクが好きってわけじゃないのかな。
あ、あうあうぅ……
メイコねーさんの機嫌がよく分かんない。分かんないから恐い。怒らせちゃったらミク、本当にどうしたらいいのか分かんないよ。
オロオロびくびくしてると、二回目のため息が聞こえてきた。
「アンタは大胆なのか臆病なのかよく分かんないわねぇ」
「ふぇ、」
顎に指をかけて、顔を持ち上げられる。またちゅ、ってキスされた。
「〜〜〜〜ッ!!」
「…………うん、ミク」
「は、はいっ!」
「アンタにキスするとドキドキするの。どうしてかしらね」
「ふぇっ、」
「ねぇ?」
「そ、それは……」
やっぱりメイコねーさんは、
「み、ミクのことが好きだから……だと、思います…………」
「うん」
そうね、って頷いたメイコねーさんは可愛すぎて、ミクは頭の中がどうにかなるんじゃないか、って思った。本当に。
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