Clap log
□2010年の抱負
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「あけまして、」
「おめでとー、」
「ございますっ!」
色鮮やかにきらびやか。
振袖で美しく着飾った三人の少女達に、普段のやんちゃさはかけらも見当たらない。
にこにこと笑顔で手をついて出迎えてくれた彼女たちに一瞬怯み、賢木は呆れたように笑いながら上着の内ポケットを探る。
「………目当てはコレだな?おじょーさんたち」
にやりと笑って小さな封筒らしきものをみっつ取り出し、ひらひらと見せびらかす。
綺麗な和紙の封筒の表には、「お年玉」と結構な達筆で一言書かれている。
きらきらと眼を輝かせ、葵が賢木に両手を差し出す。
「そう!それや!!センセはさっすが、分かってはるわ〜!よッ、男前っ!」
「はいはい、ありがとよ。ほい、薫ちゃん葵ちゃん紫穂ちゃん」
葵の褒め言葉を意にも介さず受け流すと、賢木はひとり一人へ手渡した。
緋の振袖を着た薫は、着物にも負けないぐらい赤い髪を綺麗に結い上げている。
葵は落ち着いた藍色の振袖を纏い、艶やかな黒髪を編み込んで大人びた出で立ち。
紫穂は薄い赤紫色の振袖で、髪を右に寄せて止めている。ふわりと緩く波打つ髪の毛が女性らしい。
けれど中身はまだまだ子供らしく、賢木にもらったお年玉をお互い掲げてきゃっきゃと嬉しそうにはしゃいでいる。
「………う〜ん…」
賢木は複雑な笑顔を浮かべて、幼少の頃より見知った少女たちを見つめた。
「『あのクソガキどもがよくもまあ、こんなに女の子らしく育ったもんだ』……って思ってる」
ぎりりっ。
「いだだだだッ?!!」
ぼそりと呟くような紫穂の言葉の後、賢木の二の腕に激痛が走る。
涙目で慌てて腕を見やると、じとりとした眼差しの紫穂が賢木の二の腕を力いっぱい抓っていた。
「いたたた痛い痛い紫穂ちゃんッ!?」
「……センセーいい度胸してんじゃん」
「ほぉお〜……クソガキども、なあ?」
痛みに喚く賢木に、薫も葵もにこりと微笑んで詰め寄る。
ぎくりと身を強張らせた賢木に更に詰め寄り、黒い笑みを浮かべじりじりと距離を詰める三人娘。
「こら。やめないか、君達」
穏やかに窘めつつも皆本は、丸めた雑誌で少女たちの頭を軽く叩く。
「皆本…っ!」
地獄に仏とばかりに涙目のままぱあっと表情を明るくして、賢木は慌てて皆本の後ろに隠れた。
……残念ながら賢木のほうが体格が良いためにあちこちはみ出ていたが。
「ちぇ〜、冗談に決まってんじゃん!…そんじゃあ行ってきまーす」
ぶう、と頬を膨らませて出かける支度を始める薫たちに、皆本はまるで母親の如く説教をする。
「ちゃんとハンカチは持ったか?僕と賢木からお年玉を貰ったからって、あんまり無駄遣いするんじゃないぞ!ちさとちゃん達に迷惑をかけないようにな」
「…新年早々お前のオカンっぷりには頭が下がるぜ皆本……」
呆れつつも感心したような賢木と皆本に手を振り、少女たちは出掛けていく。
仲良しの友達と初詣に行く約束らしい。
嬉しそうに満面の笑顔を浮かべ、はしゃぎながら待ち合わせ場所へと向かう薫たちの姿に、皆本は思わず頬を緩めた。
「さて、改めて。……あけましておめでとう、賢木」
賢木に向き直り、改めて新年の挨拶を口にした皆本は穏やかに微笑む。
照れ臭そうにその言葉を聞きながら、賢木もはにかんだように笑った。
「おう、あけましておめでとう。今年もよろしくな」
「こちらこそよろしく。…お節とお雑煮作ってあるんだ、食べたら僕たちも初詣に行かないかい?」
「お、マジ?俺、お餅は二個な!」
お前の作るの、美味いもんな〜!と上機嫌な賢木に皆本も嬉しくなる。
やはり今日、賢木を誘って良かったと思う。
晴れて恋人同士になったとは言え今まで親友だったということもあり、関係はなかなか進展しない上に去年はお互いの仕事の都合上休みが重なることもあまり無かったのだ。
何より一番の原因は薫たちによる妨害工作である。
そのため、少しの時間でも逢える時間を大事にしたい、と皆本は思っている。
とりあえず皆本の今年の目標にして抱負は、賢木と枕を交わすことだ。
勿論この後の初詣できっちり神頼みもするつもりだ。
脳内の賢木にあんなことやこんな無体を強き、一般に公開できない画面を妄想しつつ皆本はにっこりと微笑む。
「覚悟しててくれ、賢木」
「お、おう……って、何を??」
よく分からないままに賢木は悪寒を感じつつ、それでも頷いた。
よもや親友兼恋人の脳内で汚されているとは思うまい。
「ん?内緒」
照れたように笑いつつ、それでもお賽銭は奮発しようと本気の皆本であった。
A HAPPY NEW YEAR 2010!!
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そんな訳であけましておめでとうございます!
微妙な皆賢話で申し訳ございません(汗)
こんなヘタレサイトですが今年もどうぞよろしくお願い致しますv
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