consultation room

□Lust
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「なななな何て恰好をしてるんだ君はッ!?」

起きぬけに響き渡る怒声。
(むしろこの怒鳴り声に起こされたというべきだ。)

寝ぼけながら枕元に置いた携帯で時刻を確認する。

午前8時。

「みなもと…怒鳴るな、頭に響く…っつか…俺今日休みなんだからさぁ…もちょっと寝かせろよ……」

何が悲しくて休日にいつもと変わらぬような時間に起きねばならないのか。
おまけに昨日は医師会の付き合いを断りきれず、明け方近くまで飲み会だったのだ。
少なくとも午前中いっぱいは寝ていたい。

寝ぼけているだけでなく疲れの滲む声音に、さすがに皆本もトーンを落とす。

「あ、いや、済まない。大丈夫か?お粥でも作ろうか……ってそうじゃなくて!」

「…ノリツッコミの練習か?そういやなんでお前が俺んちにいんの??」

寝ぼけた頭が少しずつ冴えてくる。

「…あ!あ〜………!…悪い、皆本…完全に忘れてた…。」

思わずベッドの上で頭を抱えた。

「うん…そんなコトだろうと思った。」

最初の剣幕はどこへやら、困ったように苦笑する皆本。



遡ること一週間前、チルドレンと皆本に『朝釣りをして、そのあと海の幸を食べに行かないか』と誘ったのは賢木だった。

早起きは渋ったものの海の幸の誘惑には勝てず、最終的にはチルドレンもうきうきと賢木の誘いにのったのだ。
きっと今日を楽しみにしていたに違いない。
どんなにがっかり…いや、怒っているだろうか。
一気に血の気が引いた。
想像するだに恐ろしい。(特に紫穂。)

「…お、怒ってた?」

「ああ…かなりな…。」

どよ〜んと一気に二人の間の空気が澱む。

(どうしよう、俺…マジ死ぬかも……。)

心なしか更に顔を青ざめさせた賢木に、堪えきれず皆本が吹き出した。

「いや、ゴメンゴメン、冗談だから。大丈夫だよ、きちんと宥めてきたし、後の事は柏木さんにお願いしてきたから…でももし本当にあの子たちが怒ってたら、お前こんな起こされ方じゃすまないぞ?」

…確かに冷静に考えればその通りだが。

「……何だよもう?!脅かすな、皆本!今俺マジで遺書かかなきゃって覚悟しかけたぜ?!あ〜…寿命縮まった…!
――ん?そんじゃさっき何に怒鳴ってたんだ?お前。」

安心して力が抜けた、と再びベッドにつっぷしながら賢木は最もな疑問を口にした。

「何にって…キミのその恰好に決まってるだろう?!何でそんな……どうしてパジャマを着ないんだ?!」

「…ハ???」

赤らめた顔で勢いよく言われて己の服装を見てみれば、ボタン全開のYシャツにボクサーパンツ一丁という微妙な出で立ち。

「あ〜…実は夕べ断れない飲み会が入っちまって。ちょっとおカタい集まりだったからスーツで行ったんだが…帰ってきた時ゃ眠気のピークで、着替えるどころかもう脱ぐのすらメンドくてさ。途中で諦めてそのままのカッコで寝ちまったんだよな。」

「だからってお前なぁ…!」

「何だよ?別にいいじゃんか、真っ裸って訳じゃなし。だいたい俺はパジャマってキャラじゃないだろ。…なんかマズかったか?」

確かにみっともないかもしれないが皆本がそこまでムキになる理由が判らない、と心底不思議そうに問う賢木に、口を開いては閉じ開いては閉じを繰り返し、皆本は結局言葉が出せない。

「〜〜ッ!何でも良いからとにかくまともな服に着替えろ!!」

「わかったわかった、だから大きな声出すなって。」



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