虚実
□07
1ページ/1ページ
「エドー!ウィンリーの所に行こっ」
「おう!」
金色の髪の少年と漆黒の髪の少女が少年の家から飛び出してきた
その後を追いかけるように金色の髪の少年がもう一人出てきた
「兄さん、リア、僕は!?」
「あはは、冗談だよ。アルも早く行こ」
三人の子供たちは元気に走ってウィンリーの家に向かう
「ウィンリー、遊ぼー」
「リア!!ちょっと待ってて直ぐに行くから」
息を切らせてウィンリーの家まで来ると二階からウィンリーが手を降っていた
「兄さん、僕たち完全に無視されたよね?」
「だよな、これだからおん……痛っ!」
何処からともなく一本のスパナが宙を飛びエドの後頭部にクリーンヒットした
「エードー、何か言ったかしら?」
振り返ればスパナを片手にウィンリーが立っていた
キラリとスパナを光らせ、顔に浮かぶ笑みはまるで般若のよう
「い、いえ。何も言ってません」
「エド、ちゃっちゃと白状した方が良いよ?」
「まだ、何も言ってねぇー」
エドは墓穴を掘ったことに気づいていない
アルはため息を吐き苦笑いした
「ふ〜ん、¨まだ¨言ってないってことはこれから言おうとしたってことでしょ!!」
止めとばかりに振り上げられたスパナ
「ウィンリー、止めてっ!!エド達を無視してた私たちも悪いんだから、ね?」
「リアが言うんだったら…」
鶴の一声とはまさにこの事だろう
リアのおかげでスパナという凶器は無事降ろされた
「リアはエドに甘すぎるよ」
「そんなことありません〜。ウィンリー、あのことエドにばらすよ」
ボソリとウィンリーに耳打ちする
「そ、それだけはダメー!」
やいのやいのと二人で騒いでいるとアルとエドも加わった
三人の取っ組み合いはそのまま日暮れまで続いた
「ウィンリー!!とっとと帰ってきな!」
「やっば、ピナコばっちゃんが呼んでる。ばっちーゃん、今行くー。リア、エド、アル、バイバーイ」
「バイバーイ」
手を大きく振り替えしながら私たちは家に帰った
エド達の家の前に着くとそこにはトリシャが立っていた
「いつまで遊んでたの、エド!貴方が一番歳上なんだからしっかり面倒をみないとダメじゃない、アルだけならまだしもリアちゃんまで連れまわして…」
腰に手を当てていつもの優しいトリシャから想像つかないほどの剣幕だ
それでも最後には目元を和ませて子供たちの頭を撫でてやる
「う、ごめんなさい」
「リアちゃんをちゃんと家まで送ってあげなさい。好きなんでしょ、リアちゃんのこと」
最後の一言はエドにしか聞こえないように囁いた
「なっ……!?」
ボンッと音が聞こえてきそうなほど一気にエドの顔が真っ赤になった
「早く送ってきてあげなさい、騎士様」
ふふふっと笑いをこぼしながらぽんと息子の背を押した
「は、は、早く来いよ。ん」
ぶっきらぼうにリアの方に手を差しのばす
リアはきゅっとエドよりも一回り小さい手を重ねた
「アル、おばさん、バイバーイ」
「バイバイ、リアー」
エドは血のように朱い夕陽を背にリアの家までの帰路に着いた
「エド、送ってくれてありがとう」
ニパッと笑うリアはエドよりも背が低いために必然的に上目遣いとなる
「お、おう。これくらい何時でもやってやるよ」
「ありがとう」
それから二人は他愛もない話をしながら歩いた
するといつの間にかリアの家の近くに来ていた
しかし、リアの家は遠くからでも分かるほどの黒煙をあげながら轟々と燃えていた
.