虚実

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「レイラ、ここへ」

男が一人広い部屋で座り威厳を漂わせた声で女の名を呼んだ
「はい、お父様。何でしょうか」


漆黒の闇の中からゆっくりとその姿を現したのは最強の矛を持つ色欲のホムンクルス、レイラ


「呼んだのは他でもない、鋼の錬金術師とその弟についてだ。これ以上計画を邪魔されるのは気にくわん。万が一にでも大切な人柱に命を落とされても困るしな」

「見張っていればよろしいのですか?」

お父様を感情の読めない碧の双眸で見据え、抑揚の欠けた声で尋ねた

「あぁ、そうだ。」

返答を聞くと軽く一礼して踵を返し元きた闇へと姿を消した








自分が与えられた部屋へと帰ってきたレイラが寛いでいるとコンコンッとドアをノックする音が室内に響いた
レイラは起き上がりドアに向かって声を投げかけた


「開いています。入ってきたらどうですか、エンヴィー兄様」




ガチャとドアを開けて入ってきたのは嫉妬のホムンクルス、エンヴィーだった



エンヴィーは真っ直ぐにレイラが座っているベッドの前まで来ると近くにあったイスを引っ張りよせ足をくみ座る



「聞いたよ〜、レイラ。鋼のおチビさんの所に行くんだって?」

ニヤニヤ口端をつり上げながら話すエンヴィーにレイラは少し驚いた

自分でさえさっき聞いてきた所なのだから

「はい、そうです。そういえば、兄様は何度か会ってるんですよね?」

チラッとエンヴィーに視線を向けるとエンヴィーは一つ頷くとおチビさんもといエドワード・エルリックについて話し始めた



「おチビさんは金の髪に金の瞳を持った生意気なガキだよ。弟の方は鎧姿だから直ぐに見つかる。これ、一応渡しとくから」



ハイと差し出されたのは一枚の写真

そこに写っていたのはエドワードに弟のアルフォンス、そしてロイ・マスタングだった



「そうそう。言い忘れてたけどこの焔の大佐には気をつけな。前の君を殺した奴だから。名はロイ・マスタング覚えときな」



そう言って指されたロイをじっと無表情で見るレイラ



そんなレイラを放ってエンヴィーはじゃぁね、と一言残して部屋を出ていった






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私はついさっきお父様に呼ばれて会いにいってきた

内容は最近、目に余るようになってきた鋼の錬金術師達を見張ること


内心めんどうですね、と思いながらもお父様の命を断るわけにもいかずに了承した





与えられた自室に戻ってきた私はベッドに寝ころがってこれからのことを考えた



「はぁー。お父様も何故私に行くようおっしゃったのでしょうか」



その時コンコンッとドアをノックする音が聞こえたので私は急いでベッドから飛び起きた




「開いています。入ってきたらどうですか、エンヴィー兄様」



気配から兄様だとさっし入るよう促した
するとやはりエンヴィー兄様だったようで軽い足どりで向かってくると近くのイスを引き寄せて足をくみ座った






兄様は二言三言話すと一枚の写真を差し出した


そして、そこに写っているロイ・マスタングという人に注意するよう言うと部屋を出ていったがその言葉は私の耳には届かない
私は写真に写っていた金髪金眼の小柄な少年にすっかり目が奪われていたから




暫くして兄様が出ていったのにも気づかずに私はただただ写真を見ていた







これが鋼の錬金術師、エドワード・エルリックか
どこかでお会いしたことがあるような、ないような


すると頭の隅でツキンッと痛みが走った



私はじっと写真を見て考えていたが結局思い出せず
その日はそのまま眠りについた









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