怪盗クイーン
□好きなのは
1ページ/2ページ
「帰ってきたぜ!」
皇帝は勢いよくドアを開けた
「お礼に酒もらってな〜」
弟子のクイーンは無表情で彼の話を聞く
今日、2人はケガをしている女性を介抱した
黒髪の美しい女性を皇帝が「俺が連れてく」と山を降りて病院に行ったのだ
基本的に山は降りないのに
(女性のこととなると別なんだから!)
クイーンは呆れと嫉妬が混ざった気持ちだった
「クイーン」
「はい?」
気づいたときには唇が重なっていた
「寂しかったか?」
笑みを浮かべる皇帝とは裏腹にクイーンは
怒った表情になる
「お師匠さまの浮気者!
いけず!バカ−っ」
皇帝に背を向けて
クイーンは走っていってしまった
「どうしたんだあいつ…」
ふわりと白髪が舞う
◆ ◇ ◆ ◇
(怒りすぎたかな…)
一方のクイーンは自室の毛布にくるまっていた
自室にはカギをかけてある
師匠であり、恋人である皇帝との恋に悩みも多い
実力も上で大人の余裕もある
寄ってくる女性も少なくない
自分では釣り合わないと常に不安だったのだ
(だからって爆発したのはみっともなかった…)
「おい!」
ものすごい勢いで部屋に皇帝が侵入した
彼にかかってはカギもムダなのだとクイーンは勉強した
「もしかして妬いてたのか〜」
「ち、違います」
ぽすん
毛布の上にのしかかってくる皇帝
自分の気持ちを見透かされたのがクイーンには悔しかった
「女に優しくするのは紳士の義務としてだけだ
俺はお前だけが好きなんだよ」
クイーンは機嫌を直すしかなかった
好きなのは
(あなただけ)
(お前だけ)
「じゃ酒のつまみ買ってこいよ」
「いきなりですか」
「愛のムチさ」
(誰か愛のムチの意味を教えてやれやぁ!)