戦国BASARA
□あなたを
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室町幕府での争いから各地に広がった戦−。
それは未だに終わりを予感すらさせなかった
(上総介さま…)
天守閣で濃姫は考えていた
遠き地で戦う夫のことを
「…!?」
濃姫の目にふと女が倒れているのが目に入った
見覚えのある金髪のくのいち
「かすが…?」
すぐに城をでて忍・かすがのもとに駆け寄る
「ケガをしているじゃない!さ…城に運ぶわ」
「私に構うな!織田家の者が…」
「だからって見捨てるのは無理よ」
かすがは腕を押さえて苦しみ始めた
濃姫は家来の男を呼び、かすがを自室に寝かせた
「夫に見られたら大変だろう」
布団に横たわったかすがが聞く
「大丈夫よ。上総介さまも光秀もいないわ」
「お前はなかなか物好きな奴だな…
私のような者を助けるなど」
しばらく沈黙があった
濃姫によってそれは破られたが
「戦であなたを初めて見たときから、忘れられなくなっていたの」
−濃の頭であの日の記憶が写しだされる
織田軍の兵を次々倒していくかすが
上杉謙信のつるぎと言われる女…
美しく踊るように戦う戦場の華。
敵でありながら心惹き付けられるものがあった−
「御方さま。薬をお持ちしました」
濃はやってきた侍女の方を振り返った
かすがに薬を塗ろうとする侍女を制止する
「下がってよい。私がやる」
「申し訳ありませんでした…」
侍女は表情をこわばらせて部屋を出ていく
「さぁ、腕を出しなさい」
「嫌だ!」
「しみるの嫌なの?」
からかう表情で言われてかすがは怒った
「忍たる者がそんなわけないだろう!」
「じゃあ出しなさいっ」
悔しげにかすがは腕を出した
「まだ少し血がでてるわね」
濃はぺろっと傷口をなめた
「やっ…」
「こういう傷は舐めた方がいいらしいわ」
薬を傷口に塗るとかすがは沁みるのか、
痛がっていく
「ん…ふ…あっ」
「もう少しよ。我慢しててね」
「もう少し優しくできないのか」
「これで精一杯よ。はい終わり」
包帯を巻いて濃はかすがの腕を包んだ
「早く治しなさいね」
同時に濃はかすがが治るのも嫌な気がした
あの武将のところへ帰ってしまう
(私をこんな気持ちにさせるなんてあなただけよ)
この感情の名前が濃にはわからない