メイン
□しゃぼん玉
1ページ/1ページ
「ただいまー」
靴を脱ぎ、家へ上がる。
午後6時過ぎ。
今日は、所属している野球部の顧問の先生の出張の関係で部活がなかったため、早く帰ることが出来た。
「おかえりー」
返事があったが、姿が見当たらない。
妹の声だ。
声が聞こえた方へ行くと、縁側に腰掛ける、妹の姿を見つけた。
「なにしてんの?」
「割れないしゃぼん玉だよ。今日理科の先生が教えてくれたんだ」
瞳をキラキラさせて妹は言った。
「見てて」
そう言って、切り込みを入れたストローを吹いて、小さいしゃぼん玉を作った。
光に当たり虹色に輝く綺麗な丸が空中に浮かんだ。
ほんとに割れないのか?
手を伸ばして触れてみる。
しゃぼん玉は音もなく壊れた。
驚くほど儚く、潔く。
「割れるじゃん。」
妹は何も答えない。
ずっとしゃぼん玉を吹きつづけていた。
しゃぼん玉
‐‐‐‐‐‐‐‐‐
'10 05.25