novel
□口に残る嫌悪感
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今日この日は愛を伝える一年の一度の機会だとか、
そう考えれば綺麗だが
結局は企業の業績を上げるための企画に上手い具合に躍らされていると言うこと
世間じゃクリスマスに続くような浮かれた日なのに小十郎はいつものように眉間に皺を寄せマンションの最上階を目指しボタンを押す
目的の階まで半分を過ぎただろうか、エレベーターの中には小十郎以外3人が囲むようにしている
見慣れた光景、
松永と小十郎の真の主(少なくとも小十郎はそう思っている)政宗が和平を決めたとき、松永が出してきた条件のひとつだ
卿の宝である右目を夜の間だけで良い、私の手元に置くこと
そしてその間は私の部下の監視下に置かせてもらおう
そんなことせずとも小十郎には政宗に反するに値する行動なぞとるはずがない、松永もそれを知っているはずである
全く、何を考えているのだろうか、松永久秀という男は
エレベーターがこれ以上、上がれないことを知らせるようにドアが開く
松永の部下は降りずに小十郎一人が広い廊下に出された
出された、と言っても小十郎が突き飛ばされたりした訳ではない
横にも縦にも広いこの廊下に続くのは松永の部屋しかない、小十郎は豪奢な生活より質素、シンプルな方が好みであるが松永の趣味に口を出すことはしない
所詮は仕事の延長である