novel

□ああ、愛しの右目
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今俺の背後にあるものは何だ?


燃え盛る火の中、松永久秀であった灰が手のひらで舞う


まるで昔の臆病な自分が戻ってきたかのように俺は怖くて、後ろを振り向けない


声が聞こえる、筆頭、筆頭、と
その声が轟々と燃え盛る炎とともに渦を巻き、覆い尽くされるような感覚に陥れられ、座り込む

頼む、俺を責めないでくれ

見捨てないでくれ

こんな自分を見ないでくれ、構わないでくれ

楽な体勢になったとはいえ、声は止まない、


なあ、どうすれば良いんだ、俺は

そう思っても煤けた石は何か、俺に足りない何かを教えてくれない

なあ、いつもみたいに教えてくれよ

こんな俺を叱ってくれよ

大丈夫ですか、と俺の顔を覗くのはお前じゃない



臆病者はゆっくりと背後に振り向く

その先には動かないただの彼の右目だったものが横たわっている

右目、と言ってもそれは臆病者だった彼を変えた相棒と呼ぶのは軽々しい右腕のように働いた従者

右目を失った今、彼は臆病者に逆戻り

涙こそもう出ないが、ただただ見つめることが出来るだけでも昔の彼よりか幾分成長したと言えよう




ああ、愛しの右目




(そして右目は)

(業火に攫われた)



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政宗様は小十郎が居なくなると昔に戻るのかな、と



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