novel

□手中に収め、た
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欲しいものは自らの手で手に入れる


そして何も手に入れてきた


地位や名誉、高名な品の数々


そのためなら謀反も止む終えぬ






だがそれ以上を望むのは、やはり人間の性、と言うものなのだろうか







ひたり、そんな音がした

人の出入りがほとんど無いこの場所は日すら拝めない


かちゃりと金属音

ひたり、ひたり、と近づく音

男は振り向きもしない

ただただ、ぼぅっとどこかを見つめているだけ


表情は見受けられない


「ご機嫌いかがかね、片倉小十郎」





若き独眼竜は死んだ、それもあっけなく



対峙していたのは私の軍ではない



私は高みの見物をしていただけ



そしていつものように宝を奪った

そうそれだけ


…いや、正式には奪っていないな、その時には主はこの世にいなかったな


すなわち拾った、というべきだろう


茶器もそうするように、

誰の目にも触れないように、

誰の声も届かぬように

私だけのために

大事にしまい込んだ






屈んで顎を取ってみる、
生気のない目
だらしなく開かれた口
床に投げ出されるようにされた腕、



ほう、人一人死ぬだけで人間とはここまで変わってしまうものなのか、いやはや勉強になる


試しに一発腹を殴ってみる

うぐっ、と声が漏れたがそれ以上の反論は見えない

髪を引っ張り、顔を寄せても反応は見られない、目だけはどこかを見つめている




唇を合わせ、押し倒した




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