短文

□哀しみの中に
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俺は最低だ。

恋人のフランが居るのに、まだマーモンを想うと胸が苦しくなる。


それを見透かしてるフランは、哀しくないのだろうか?



いや、哀しくない訳がない。


でも、貴方は今日も笑う。




「ベルセンパイ?」


「・・・ん?」


「何ボーっとしてるんですかー?
皆行っちゃいましたよー?」


「あ・・、ごめん」


黒いスーツを身にまとった俺とフラン。


今日はマーモンが死んで49日の朝。


「早く行きますよ!」


俺は手を引かれながら車へ向かう。





「センパイ、何考えてたんですかー?」


車の中で唐突に問われる。


「・・・・・」


黙り込む俺の顔を覗くフラン


「マーモンの事ですかー?」


「・・うん」


小さく返事を返す。



「そんな辛気臭い顔似合いませんよー?
ほらー、笑ってください」


フランはむにーっと俺の頬を摘む。


そんなフランが愛しくて、抱きしめた。


「・・セン・・パイ?」


「俺、矛盾してる。フラン好きなのに、マーモンが忘れられない」


自分でもこんな事するつもりは無かった。


こんな事言ってどーするのかも判らない。


けど、衝動的に動いた身体。


もう止められなかった。


「俺、フランの事これからも傷付ける。フランは好きだけど、何処かでマーモンを待ってる」



「何でですかー?」


フランの言葉に目頭が熱くなる。


必死に涙を堪える。


泣きたいのはフランの方。


こんな事を言われるのは当たり前。


なのに、何でこんなに哀しいの?


心の中を抉られる様な気分。



「・・ごめん」


それしか言えなかった。





「そーじゃなくて、何で忘れようとするんですかー?」


一瞬何を言われてるのか判らなかった。


「忘れなくていいですよー。肝心なのは今ですしー」


いつもふざけた口調なのに、いつもと違う。


「い・・ま?」


「そーですよー。昔の恋人がどーとか、ミーには関係ないですし。今の気持ちはどーなんですかー?」


今の気持ち・・?


今は・・・


「フランが好き」


その言葉を聞いて、ホッとしたのか優しく微笑むフラン


「ならいーですー。」


「いーの?それで。」


「ミーはそんな器の小さな人間じゃないですー。誰にでも忘れられない人は居ますしねー」


そう言って俺の頭を優しく撫でる。


嗚呼、俺は幸せ者だな


俺は珍しくフランの腕の中で涙を流した。


その涙は・・


君に出会えた嬉し涙。
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