短文

□大好き
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ミーが大好きなセンパイは、いつも偉そうに振舞って、自分の否を認めない。


我侭で、何でも「俺、王子だもん」で済ませてしまう。


気に食わないとナイフを投げてくるし、可愛いことなんて滅多に言わない。


そんなところも好きと思うのは可笑しいんですかねー?







「センパーイ、これ見ませんかー?」

「ん?何それ」


ミーはあるビデオを持って、ベルセンパイのの部屋を訪ねた。


「これー、今ハヤってるホラー映画なんですけどー、一人で見るのつまんないんでー」


そういうと、顔を引き攣らせるセンパイ。
実はベルセンパイはホラーが大の苦手。
それを知って、と押しかけてみたのだ。


「・・俺、そーゆうの興味ない」


「えー、もしかしてー、ベルセンパイ怖いんじゃないですかー?」


「王子に怖いものなんてねーし!」


センパイは無機になって言う。


「じゃあ、一緒に見ましょーよ」


「分かったよ!蛙こそ怖いんじゃねーの?」


ししっと笑いながら、余裕を装うセンパイ。


作戦大成功!


ミーは心の中で万歳する。


「そんな訳ないじゃないですかー、でもーこの映画かなり怖いらしいんですよねー」


「・・まじ?」


「はいー、ミーは平気ですけどー」


ベルセンパイは微かに震えている。


嗚呼、可愛いなぁー
これで抱きついてきたら美味しいのに。


とか考えながら、テープを差し込む。



「始まりますねー」


「・・なぁ、手握ってもいーぜ?」


「別に結構ですー、センパイが怖いって言うなら握ってあげてもいーですけど」


「何言ってんの?俺、怖くねーし」


強気の言葉に反して、震える手。


あえて見なかった事にして、
「じゃー、雰囲気出す為に暗くしましょーか」


と、明かりを消す。


「・・・・いーじゃん、暗いの」


完全に言葉に弱さが見れる。


(相当怖がってますね)


ミーは心の中でほくそえむ。


映画の内容は、主人公が廃墟の城で暮らす話だった。

そこに住み始めてから主人公の周りに怪奇現象が起こり、夜中には亡霊が城を這えづり回るというもの。


確かに、特殊メイクはリアリティがあり怖かったが、ミーはあまり怖くなかった。


なのにセンパイはさっきから、ビクビクして、耳や目をふさいだりしている。


「センパーイ、怖いんですかー?」


「・・はぁ?んなこと・・ねー・・し」


あまりの怖さに声が完全に震えている。
可愛く過ぎて我慢出来ず、ぎゅうっと抱きしめた。

「フ・・ラン?」

「ミーがずっとこうしててますからー、大丈夫ですよー」


「・・うっせ」


そう言いながらも、震えていた体は安心しきった様に落ち着いた。

「誰にも言うなよ?」


「はいー!センパイとミーの秘密ですー」

ミーの心は満たされてく。


やっぱ我侭でも何でもミーはこの王子が大好きなんです!
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