短文

□青いリング
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「・・あれ?」

朝起きたら、リングが無くなっていた。
って言っても、ヴァリアーの嵐のリングじゃなくて、フランに貰った奴。


「やっべ」


俺は部屋中探したが、何処にも見つからない。


リングはフランが俺の誕生日にくれた宝物だった。


しかも、フランとお揃い。
フランは結婚指輪の代わりとか言っていた。


あの時は「ふざけんな」とナイフを刺してやったけど、内心凄く嬉しかった。


誕生日の日からずっと填めていた。
寝る時とか、手を洗う時以外はずっと填めていたのに。


「フランに知られたらどーしよ」


それだけが不安だった。


一先ず、誰かに聞くしかない。
食堂へ行き、1人ずつ聞いて回る。

だけど誰も知らないと答えた。


「どーしよ・・」


幸いフランは、昨日の任務が遅かった為寝ていたが、起きてきたらどう説明すればいいのか。


そうこう考えてるうちにお昼になり、フランが起きてきた。


「セーンパイ!おはよーございますー」


「お・・はよ、」


「?センパイどーしたんですかー?」


フランは様子の違う俺に違和感を覚え、すぐに聞き出す。


「何でもねー、ちょっと俺用事あるから」


そう逃げるように部屋に閉じこもる。


フランは?を頭に浮かばせながら俺を見ていた。


「・・どーしよ、まじで」


見つかるはずも無い部屋を再び探していると、窓が開いてる事に気付いた。


「窓・・?」


俺の部屋は木が近くにあり、誰でも出入りできそうだった。


いつもは閉めていたのだが、昨日は眠くて忘れていた。


「もしかして・・」



俺は木に攀じ登ると、黒猫が一匹いた。


そして黒猫はキランと光る青いリングを銜えていた。


「あー、俺のリング!」

俺は黒猫に近寄り、リングを渡すように言う。

だが、相手も猫なので通じるはずも無く、威嚇してくるだけ。


俺は黒猫を捕まようと腕を広げ構える。

がばっ


「よし、捕まえ・・あっ」

黒猫は腕からするりと抜け出し、部屋の中へ入っていった。


「やっべ・・」


俺は黒猫の後に続き、部屋に入る。


黒猫は少し開いていたドアの隙間を通り、廊下に出て行った。


「おい!待てって」


慌てて廊下に出る。


長い廊下を素早く走り回る黒猫。
俺も脚には自信あったが、ちょこまかと走り回る黒猫との距離は縮まらない。


「くっそ・・」

息を切らせながら、走ってると前方にフランの姿が見えた。


「カエル!その猫捕まえろ!」


「何でですかー?」


「いーから、早く」


フランは納得いかないような顔をしながらも、黒猫をひょいっと捕まえた。


「捕まえましたよー」


「さんきゅ」

俺はフランの所まで行き、猫を引き取る。


「この猫どーしたんですかー?」


「ん?いや・・」


俺は黒猫の口を見る。


黒猫は指輪をぺっと出し、俺の手からぴょんっと抜け出すと消えてしまった。


「あ・・これ」


フランはそれを拾い上げ、俺を見上げる。


「・・削れてる」


指輪は青い部分が削れていた。
これでは汚いリング。


「これ、ミーのあげた奴ですかー?」


「・・うん、ごめん」


俺は申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
折角くれた結婚指輪。

なのに俺は台無しにしてしまった。


「仕方ないですねー、でも気にしないで下さい、センパイがあんな必死で追いかけてくれただけで嬉しいですー」


フランは優しく微笑んだ。


「でも・・結婚指輪だったのに。大切な指輪だったのに」



「代わりの指輪なんてミーがまた買ってあげますからー。だってミー達は将来を誓い合った仲でしょー?」


将来を誓い合った仲・・


「ありがと・・フラン」


俺はフランに抱きついて、いっぱいお礼を言った。


生まれてくれてありがとう、
ヴァリアーに入ってくれてありがとう、


そして神様、俺達を巡り合わせてくれてありがとう。


きっと俺の運命の人はフランなんだろうと思う。
だったら、この出会いは必然だったのかな?

珍しくそんなことまで考えてしまう。


だって俺こんなに幸せだから。
大好きなフランとこうやって過ごせる。
それが凄く幸せで嬉しかった。


(フラン、ありがとう。
俺たち、ずっとずっと一緒だぜ?
離れたら切り刻んでやるから覚悟しとけ!)

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