珊瑚色の絵本

□第1話 始まり
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風が吹いた。

その風は私の長い髪を舞い上げた。



*****



「コーラル!どこに行ったの!」



そんな声が家の中から聞こえてくる。

けれど、私はその場から動こうとは思わなかった。



「コーラル、呼ばれてるぞ」

「いいんですよ、お父様。お母様は心配性なだけですから」



私は自分の独特な色素を持った髪を押さえながら笑う。



「さてと、それじゃ、行きましょうか」

「母さんには言わなくていいのか?」

「お母様には一応言ってありますし、それにお父様がどうにかしてくれるのでしょう?」



その言葉にお父様は「まあな…」と呟く。



「ですから、行きます」



そう言って私は庭の芝生の上に置いてあったショルダーバッグを手に取る。



「寂しくなったら帰ってくるんだぞ?」

「どこの親バカなんですか」



そう言いながら私は苦笑する。

ああ、でも親バカなのはお母様もでしたね。



「それでも、私は世界を見てみたい」



その声は私にしか聞こえない。

そんな程度の声の大きさだったから。



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