珊瑚色の絵本
□第2話 赤の少年
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クチバシティ。
カントー地方唯一の港町であるその町に私はいた。
「さて、これからどうしましょうか」
ボールの中に居る自分の『家族』達にそう問いかけると、彼等は揃って首を傾げた。
不意に、強い風が吹く。
強風に煽られる髪を押さえながら私は顔を上げた。
瞬間、視界に映ったのは赤色の帽子。
「ハクア!」
私はボールからヤミカラスのハクアを出すと、海に落ちて行こうとする帽子を取りに行かせた。
バサリ、とヤミカラスには似つかわしくない白い翼を羽ばたかせながらハクアは戻ってくる。
もちろん、その嘴に持っているのは赤色の帽子。
…一体、誰の帽子なんでしょうね?
「あ、おーい!君!」
ハクアから帽子を受け取りながら、私はその声の主へと振り向く。
私に声をかけたのはフシギダネとピカチュウ、それにニョロゾを連れた男の子。
年齢は私と同じくらいでしょうね。
「その帽子さ…」
「あ、これ貴方の帽子だったんですね」
成程。
確かに彼の来た方向から風は吹きましたしね。
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