珊瑚色の絵本
□第5話 謎の少女
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「それじゃ、今から行ってきますね」
「今から、ですか?」
はい、と頷くとエリカさんは「そうですか…」と呟いた。
心配してくれているんですか?
そう問えば、彼女は小さく頷いた。
「大丈夫ですよ。無理はしませんから」
多分、と言う言葉を危うく言いそうになったけれど、私はそれを飲み込む。
エリカさんにそれは気付かれていないようで、私はほ、と息を吐く。
「保護したら連絡しますね、エリカさん」
私はそう言うと、花の香りが満ちた屋敷から出る。
私がいなくなった後、エリカさんがポツリと呟いた。
「お願いします…、コーラル・ベルリッツ」
そう、彼女が私のフルネームを呟いた事を私は知る由も無かった。
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「えっと、この辺りなんですけれど…」
街の人から話を聞いて辿り着いたのはタマムシシティの郊外。
とりあえず皆を出しておこうと思い、ボールに手を掛ける。
けれど、それは叶わなかった。
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