平成陰陽物の怪忌憚

□序章  物の怪 夢を見ること
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序章   物の怪、夢を見ること

神将が夢を見るということは珍しい。
『光』が途絶えてどれほどの月日がたったかはわからない。
ただ何の希望も持てずに、あの頃に戻ったように闇の中で身を潜めていた。
 そんな時、気がついたら見覚えのある少年が目の前にいて陽だまりのような笑顔をこちらに向けていた。
これは夢だと断定できる。だってこの光はずっと前にいなくなってしまった。
夢でもいい。ずっとこのまどろみの中にいることができたのならば幸せだ。
何よりも愛おしい光をこの手におさめようと彼は手を伸ばした。
しかし、彼が手を伸ばすより先に少年の両手に手錠と鎖が現れて繋がれる。
少年はその鎖から逃れようと暴れるが鉄でできた手錠と鎖は外れる事はない。
先ほどまでの笑顔が曇り、彼が一番見たくない涙を流し、彼に向かって少年は手を伸ばした。
彼も急いで少年に手を伸ばしたが、少年の手を掴む前に鎖が引っ張られ少年は闇へ引きずり込まれてしまった。
彼は少年を追いかける。必死に血眼になって追いかけた先には鎖で縛られた少年をまるで人形のように抱える影があった。
青い目と背中に広がる黒い翼。感じた事のある妖気が彼の行く手を阻む。

「お前は…」
「フッ…人の配下に堕ちた哀れな神よ。貴様の大切な者は我がもらってゆくぞ」
「待てっ!」

 妖気と共に激しく吹きつける風に彼の意識は闇に堕ちていった。
手を伸ばした先に少年が涙を流しながら目を閉じたのを堕ちて行きながら見ることしか彼には出来なかった。



 目が覚めた時、彼は空にその手を伸ばして固まっていた。
何もない虚空をただ見つめて、先ほどの夢を思う。
探さなければ…探さなければ取り返しの付かない事になる。
 『光』がまた消えてしまうと思った彼は白い獣の姿に変化して闇の先の光の中に走っていった。



行き先は…平成の首都。東京。
 

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