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□覚めない悪夢
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「クラウド」
クラウドが目を覚ますと、ザックスの心配そうな顔が一番に見えた。クラウドの顔を覗き込んでいる。
「どうした? すごくうなされてたぞ」
「・・・怖い夢を見たんだ」
クラウドは掠れる声でそう言うと、ザックスに抱きついた。その存在を確かめるように、きつく、きつく抱きしめる。
「痛ぇよ、クラウド」
ザックスは小さく笑って、それでも、されるがままにした。
「どんな夢だ?」
「ザックスが、消える夢」
「おいおい、勝手に人のこと消すなよ」
ザックスは笑って返す。クラウドはさらに、腕に力を込めた。
「それだけじゃない。・・・それだけじゃないんだ」
不意に、クラウドの両手が、すっと虚空を掻いた。
クラウドは上体を起こし、そっと辺りを見渡した。さっきまで確かに腕の中にあった温もりは、まるで最初からなかったかのように、消え去っていて。
部屋の中には、寒いような寂しいような、冷たい空気が残って、代わりに漂っていた。
ザックスが、部屋から消えていた。
クラウドは両手を合わせてこすった。かじかむほどに、指先が冷えている。
そのことに気付くと、クラウドはその両手で顔を覆った。
「夢から・・・覚めないんだ」
ぎしり、と、ベッドが軋んだ音を立てた。空間は、急に、色彩を失ったようだった。
「ザックス・・・」
指の間から、ひとしずく、涙が溢れて漂った。







覚めて。
早く覚めて、こんな悪夢。

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