君隣空下
□六
2ページ/23ページ
【六】
沖田さん、沖田さん、………総悟!
「と…しろ…」
辛うじて伸ばした手の先に、愛しい顔があった。
「な…んで、泣いて…」
幾筋も伝う涙を、指で拭う。其の手を、彼の手が掴んだ。
血の滲んだ、痛々しい手。
「怪我、してんじゃねぇか…」
擦り切れた手の平に触れる。
「だって…!!」
彼が声を荒げると、また、一筋流れた。
「怒ったり…泣いたり…忙しい人でィ…」
定まらぬ視点で、どうにか彼を映す。
美人はどうなっても綺麗なのだと、この目をもって知った。
しかし、悲しきかな。
オレの意識は、そこで途絶えた。