短い物語!
□ワガママな王様の甘いお菓子
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-ヴァリアー邸-
「ボス―!!」
「………、」
バーン、と扉を開けて入ると、そこにはボス、ザンザスが大きな椅子に背を預けて眠っていた。
「あれ、寝てるのか……残念」
無理に起こすと怒るから出直そう。
せっかく作ったのになぁ…。早く見せたかったんだが仕方ない。
私はしゅーんとして戻ろうと踵を返した。
「……どこに行く気だ」
「ふぇ?!!」
突然の超ハスキーボイスにびくっと肩を揺らす。
再びボスに目を向けると、さっきまで寝てたはずのボスが目を開けていた。
「あれ、ボス。いつの間に起きて…」
「テメェが入ってきた時だ。でけぇ声で起きたんだよ」
じゃあそれまで狸根入りか。
すぐ起きてくれればいいのにー。
「で?俺に何のようだ?昼寝の邪魔をするほどの用事か?」
「え、あー……そこまで大事じゃないですけど……しいて言うならチョコを渡しに…」
「チョコだと?」
ボス、解せぬ、みたいな顔しないでください。
チョコはチョコです。お菓子の何者でもないです。
「今日バレンタインなんで。今スクアーロたちにも配ってきたんですよ。ボスは甘いの苦手だと思ったんで、カカオ90%のチョコです」
「………」
私は近寄り、ボスのデスクにコト、とシンプルにラッピングした包みを置いた。
少し、包みを見て、再び私に目を向けた。
「ふん、この俺があのカスどもと同じ施しを受けるとはな。いい度胸だ」
「え、そ、そんな事ないですよ!!同じなんてとんでもない!!」
「日本のバレンタインだと、女が好きなやつに本命のチョコを上げるらしいな」
「実際いろいろですけどね。義理チョコだったり友チョコだったり……まぁ全部お菓子メーカーの陰謀で始まった事ですけど」
「それは本命だろうな?」
……え?
私はかちん、と固まってしまった。
「ここに置いたチョコは本命だろうな?」
まずい。
私としては思いっきりいつもお疲れ様です的な意味を込めたチョコ。
本命の事は考えていなかった。