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□それを嘲笑った私の心理小説。
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「……きもちわるい、」
僕が欲しいと散々喚いて犯して好き勝手にした挙げ句の発言がこれだ。全く、腹立たしい。
起き上がろうとすると未だ僕の両手首を拘束している荒縄がぎしりと鳴った。
ち、と小さく舌打ちしてから太子、と呼ぶ。思いの外掠れていた自らの声に少し驚いた。
「太子、いい加減これ解いてくれませんか」
「………」
「太子、」
「……」
「た」
「妹子、今どんな気分?」
まるで僕の声何て届いていないような態度にまたストレスが溜まる。両手が自由だったら確実にぶん殴ってたぞこのおっさん、と内心毒づきながら嫌々返事をした。
「帰宅途中に拉致られた挙げ句犯されて気分なんて良いわけないでしょう。」
だからさっさとこれ、解いて下さいと付け足すと、太子はこちらに手を伸ばしてきた。
「そうだよなあ、私もさっきからもやもやしてるんだ。気持ち悪いのが止まらなくて、」
伸びてきた手は縄をゆっくりとなぞらえていく。
「あの……?」
縄の上を這うばかりで全く解く気配のない太子に痺れを切らして、小さく身をよじった。
「逃げないで。…逃げようとしないで。」
途端に静止の声をかけられ仕方なく動きを止める。
先程まで縄をなぞらえていた指は腕を伝い首を伝い、頬をつ、と撫でた。その軟らかな感触にぞわりと肌が粟立つ。
「…綺麗、」
そう言った太子の顔はどこか辛そうでこちらの胸までつきりと痛んだ。さらに初めて見る上司の表情に少しの不安も加えられる。
「どうしたんですか太子、何かありましたか?」
問うと今日初めてきちんとしたリアクションが返ってきた。
くるりと悲しい色を湛えた目をこちらに向け、そっと口を開く。
ほしい と。
そう三言発した直後、本日何度目かの口づけが無理矢理送られた。こじ開けられた唇から太子の舌が無遠慮に入ってくる。
歯をなぞられ舌を追われ、下し切れなかった唾液はもう自らの物かも太子の物かもわからない。
すぐに苦しくなって唯一自由な脚で太子に限界だと告げるのももう今日だけで何度目だろうか。
ようやく開けた口から大量の酸素が入ってきて少し噎せる。
こちらが必死に息を整えているというのに、元凶の男は涼しい顔をして再び言い放った。
きもちわるい。
「―…、」
そう言い放った太子の顔は嫌悪しか表しておらず、好き勝手された僕には不満しか沸いて来ない。
欲しいって言ったくせに、何なんだこの男は。
「本当、何なんだろうね。」
僕の目をしっかりと見て発せられた言葉にぎくりとした。いくら耳が良いにしても読心までできるなんて、もう耳の機能を超えているだろう。
なんて考えていると、ぽつりと太子が呟いた。
「本当に綺麗だと、欲しいと思うんだ。」
「え…、」
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