□思春期故の、
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東京観光に来てたくさん歩いたのが今日の昼。
健二さんが 僕は下に布団敷くからベッド使って良いよと言ってくれたのが数時間前。
そんな健二さんがトイレか何かで部屋を出て行ったのが数分前で、そのまま寝ぼけてベッドにどさりと倒れこんできたのが数秒前。

そして背中に感じる体温と呼吸音がやけに鮮明で緊張してるのが今。


今まで規則正しく動いていた心臓が大きく乱れた。
どくどくどくどく煩いくらいに働いて、送られた血液で顔がだんだんと熱くなる。

「……ん、」


「っ!!」


健二さんが少し寝返りを打っただけで大袈裟に反応してしまう。
東京観光で歩き回ってくたくたに疲れたから寝たいのに、こんな状況で眠れるわけがない。


(仕方ない、下の布団で寝ようかな…)


健二さんを起こさないようにそっと起き上がろうとするが、それは叶わなかった。背中側から伸びてきた健二さんの腕によって、腰をしっかりと抱かれて動けないから。



(え、てゆうか近っ、近いっ)


僕とくっついて暑いのか、んー と唸る健二さんを余所に、僕の頭の中はもうどうしていいかわからずぐるぐる。
先程よりも近付いた人肌に僕の心臓はさらに大きく波打つ。もう煩い心音さえも耳に入らないくらい。
何もできずに固まっていると、横腹にあった健二さんの手が、不意に つ、と下へ移動した。


「ーっ、」


触れるか触れないか、微妙な感覚にざわりと肌が粟立つ。


やばい。
正直かなりやばい。
ぶっちゃけると下半身の方が。


まあ僕も健全な男子中学生だから仕方ないと思う、こればっかりは生理現象だから。

(でもTPOをわきまえろ僕っ…!)


ここは健二さんの部屋で後ろには本人がいて、そんな状況で出来るわけがない。
どうにかこの状況を打破しないといけないと焦燥感にかられるが、そんな僕の想いを余所に健二さんの手は非情にも止まらない。
いつの間にか上がってきた掌がするすると脇腹を撫でる。


「ひっ、ぅ」


ぷつり
と 理性がきれる。所詮欲求に対峙したときの理性なんてないようなもんだ。


恐る恐る自らに向かって手を伸ばす。ハーフパンツ越しに触れると既に緩く勃ち上がっていた。


「ん、っ」


意を決して右手をズボンに突っ込み直に触れると、一瞬電流が流れたような快感に教われる。
もうここまで来れば早く終わらせるしかないと、僕は上下する手を早めた。
断続的に洩れる声を必死に抑える。羞恥心やその他諸々で、顔は火が出そうなくらい熱い。
だんだんと意識をそちらに持って行かれた頃、今まで止まっていた健二さんの手が思い出したように動いた。


「うあっ…!」


意図していなかった急な感覚にふるりと肩を震わせる。不意に洩れた自分の声が思いの外響いて慌てて口をつむいだ。
それでも一気に絶頂へと近付いた僕はさらに手の動きを早める。


「ふ、っ……ん、ぁ、っ」


「…わー、なんかかわいいことしてる。」


「っえ、!?」


すぐ後ろからはっきりと聞こえた健二さんの声。
さあっと頭から血が下がる感覚、初めて経験した。今まであんなに熱かった顔から血の気が無くなっていくのがわかる。


(嘘、嘘嘘っ……見られたっ!!)


どうしようどうしたらと上手く働かない頭をフル稼働させる。
少し震える唇を開いて、できるだけいつも通りの口調で聞いてみた。


「…いつから見てたの……」


「今起きたとこだよ。なんかごそごそしてるのに気付いて目が覚めたんだ。」


あは、といつも通り能天気に笑う健二さんに眩暈がした。




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