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□大きすぎた
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死者を裁く、なんて
そんな仕事をしているとまあ中には嘆き叫ぶ者も当然居る訳でありまして、しかしこちらとしてもそんな我が儘に一々付き合うことは出来ない次第でございます。
例えば罪人が本心から悔い改め謝罪をし、せめて一目、愛した彼奴に会いたいと申しましても天国へは御案内出来ない決まりとなります。

「一目でいい、一言でいい。愛した彼女に会わせていただきたい。」

罪人は涙ながらに訴える。大王秘書である褐色の鬼はしかし今説明したように…、と 首を縦に振る気配はなかった。
男は半ば叫ぶように言い放つ。本当に愛しているんだ!

鬼が困っているとすぐ右から静かな声が響いた。
「だったら何だって言うの。」


しん、と 冷たい声に部屋が静まり返った。
声の方を見やると、紫の着物を着た男が冷たい目をして罪人を見ている。彼は淡々と続けた。

「愛しているからって、それが冥界の掟を守らなくていい理由にはならないよ。唯一出来ることは忘却を望みながら地獄の時間をただただ耐えることじゃない?」

最後にはっと嘲笑うように吐き捨てる。
その言葉に罪人だけでなく鬼男まで固まった。
ほら、鬼男くん と、閻魔に急かされ自らを取り戻した鬼男は男の腕を引き地獄の穴へと連れて行く。
男は墜ちる直前、死んだような目で閻魔を振り返り呟いた。

「情けはないのか」

「、」

閻魔が詰まった一瞬の隙に男は墜ちて行った。そんな彼の揺らいだ瞳に気付いた鬼男は、掻き消すように声を張り上げる。

「次の方どうぞ、」




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