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□喰らい尽くせ
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「…、欲しい。」
そう呟いたかと思えば、太子は一瞬後既に難しい顔をして考え込んでいた。

「…どうしたんですか一体。言っときますけど、もう一回なんて聞きませんからね。」
事後の気怠い雰囲気になんてムードもへったくれもない台詞だろうかと思ったが仕方がない。生憎明日は平日なのだから。
しかし太子は僕の言葉なんて届いていないかのように未だ眉をひそめている。

「太子、聞いて―…」

「―なあ、妹子、頂戴?」

聞いているんですかと言う僕の言葉を遮ってまた訳のわからないことを言い出した目の前の最高権力者をどうにかしてほしい。
もう相手にするのも面倒になって、どうぞ好きなだけ。と答えると、何故か太子はまた唸りだした。

「本当何なんですか太子、気持ち悪い。」

「気持ち悪いってお前………ただな、欲しいって言って貰ったあとはどうなるんだろうかと、思っただけだよ。」

「はあ……、え?」


いつもながらわけの解らないことを考える人だ、と理解することを放棄した頭の隅で思う。


欲しがって貰ったあと


「…大事に取っとくなり使うなりすれば良いじゃないですか?」

「や、うん、そうじゃなくて。」

「?」


益々訳が解らないと言う顔をすれば、太子はまず自らを指差した。

「例えば先刻。妹子の言った太子の全部下さいって言葉、」

「ちょ、何例えに出して来るんだあんたは!!!」

「私が私を妹子に分け与えたとする。」

「……はあ。」

「でもそれだけじゃ割に合わないから私も妹子を貰う。」

「………」

「そうやってお互いを与え合った後の私たち個体は[太子]でも[妹子]でもなく一体何なんだろうな。」


(何を言い出すかと思えば。)
実際肉を分け与える訳でもなし、僕は僕、太子は太子で別個の個体のまま何も変わることはないだろう と内心小さな溜息をついた。
しかし僕なんかよりずっと頭の良い彼は、そんなこと承知の上で聞いてきているのだから回答に困る。
…精神論を語っているのだろうか、


訳の解らない太子の思い付きに、僕も頭を捻っていると、ふと隣から洩れた息が聞こえた。


「太―――、」


…こいつ、

「…寝てやがる………」


沸々と怒りが沸き上がる が、一瞬するとそれさえも通り越して呆れてしまう。
全く、この人のいい加減さに慣れてしまったんだとあきれるやら照れるやら。



(…………あ、)





「なんだ、こういうことか。」





珍しく彼よりも先に答えを見つけた僕だったが、口にするには恥ずかしすぎてとても言えそうもない。

















(お互い分け合って僕らが出来ていくんですよなんて、)


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