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□ひめ
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肉体的ケン藤、精神的藤ケン。














今まで暑くて仕方のなかった体温が急に下がったのが分かる。
テスト前のラスト5分で勉強し忘れてた範囲を見付けた時と同じ感覚だった、絶望感ってゆうかそんなんが。漫画とかでさあっと血の気が引いてるあのかんじ。



今から2時間くらい前に藤田家に到着、学校でも毎日会ってる俺らは特にすることも無かったから適当にテレビをつけた。するとタイミングが良かったのか悪かったのか調度恋愛ドラマの再放送をやっていて、さらにそれが調度最終回だった。
ぼんやりと二人で見ていると、ドラマは問題も解決、順風満帆にラストスパートを迎え、主演の男女の間に甘ったるい雰囲気が漂っていた。二人の顔が大きく映って女の子が静かに瞼を落とす。男の子が少し顔を傾けて二人の距離が近づいていった。
画面の中で唇がくっつくのと同時に右手に何かが触れ一気に現実に戻される。見ると藤田が耳まで赤くなりながら左手を俺の手に重ねていた。

この空気の中恋人に上目遣いで期待されて手を出さない男なんていますか。
触れている指を絡ませて藤田に口付ける。段々と深くなるそれにテレビの音が遠くなったように感じた。

口を離さないよう気をつけながら藤田を背もたれにしていたベッドにゆっくり押し倒す。こういう雰囲気になったことは何度かあったがその度に断られてきた。
だから今回も気持ちとしては期待半分諦め半分くらいで、まさか藤田が真っ赤な顔を背けながらも拒否の言葉をひとつも漏らさないとは思っていなかった。




そこからはなんだか夢の中の出来事みたいな感覚だった。
脱がせるのもキスも、覚束ない愛撫もなんだか現実味がないように思えた。正直初めてだから目の前のことにいっぱいいっぱいで他の事考える余裕が無かったっていうのもある。情けながら。
それでも藤田に触れてるのは嬉しかったし、満足感もあった。緊張と春先とから、吸いつくような、張り付くような肌の感触に心臓がどきりとしたのも事実だった。
それは藤田も同じだったようで、俺等の気分は確かに高まって行っていた。


それなのに今のこの気持ちは何だ。
事前に調べていた方法を上手く働かない頭で必死に思い出しながらやっと挿れるところまできたというのに。
俺自信が藤田の中に全部入った瞬間、一気に夢が覚めてしまった気がする。
掴んでいた藤田の足が力の抜けた俺の手から落ちた。その小さな振動さえつらいのか藤田の眉間の皺が深くなる。
絶え絶えの息も汗ばんだ肌も藤田の表情も、先程までは確かに興奮剤料だったはずの物に今は何も感じなかった。
絶望とかそんな類のものが俺のなかを支配する。ガキの頃悪さをしたのを思い出した。結局それは誰にもばれなかったものの、罪悪感が染みのように取れなくて、いっそ全部ばれてしまえば良いのにと思った、今の気持ちはそれに似ている。
妙に萎えてしまった気持ちと一緒に藤田から抜いた。

すると藤田は不思議そうにこちらを覗きこむ。
今までどうにか守ってきたささやかなプライドだとかその他諸々を投げ捨てて藤田の胸に飛び込んだ。
俺らしからぬ行動に驚いたらしい藤田から困惑の声が洩れる。それでも構わず小さい子供のように頭を押し付けると藤田はそっと俺の髪を撫でた。
藤田も俺も何も言わない静かな空間で、藤田の心音だけが俺の耳に届く。
一定の心臓の打つリズムと髪に触れる藤田の手が心地良くて俺は瞼を閉じた。
その拍子に何かが頬を伝ったのには気付かない振りをする。
















































思春期難しい。
 

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