日和
□呵責。
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「ねえお願い、優しくしないで。」
-呵責。-
「う、っぐ、ぁ…っや、やめ…」
仕事が終わり、薄暗くなった裁きの間に、閻魔の声が響く。
「大王、うるさいですよ。そもそも、優しくしないでと言ったのはあんたの方でしょう?」
鬼男は後ろ手に縛られ床に転がる閻魔を冷たく見下ろした。
「っふ、そ、だけど……っぁああ"ッ」
「口答えはやめて下さい。むかつく。もっとひどくされたいんですか。」
服を剥かれ、露になっていた腹にざく、と爪を刺す。爪が刺さった箇所からは白い肌を汚すように紅い血が溢れた。
「ッ、うああ"ぁああ"ぁっ」
「…あは、紅、似合ってますよ。大王様。」
腹から爪を引き抜き、にこりと微笑みながら言う。
「あ、すごいもう治ってきてる。あんたほんと回復力だけはすごいですね。」
「何の役にも立たないくせに、」
鬼男が冷たくそう吐き捨てると、閻魔は血と同じ紅の目に涙を溜め、謝罪を口にする。
「っ、ご、めんな、さ…っ、う、」
「何、泣いてるんですか。」
そう言いながら、鬼男も顔を歪ませる。
しかしそれはもう、閻魔の目には映っていなかった。
どこを見ているのか分からない虚ろな目で、只、謝罪の言葉だけを繰り返している。
(いつまで、大王にこんな酷いことしなきゃなんないんだろう。)
閻魔の血が付いた手で頭を抱え、鬼男も静かに泣いていた。
(抱きしめたい、泣かせたくない、苦しめたくない、)
でも、
『救いなんて俺にはいらないんだよ、鬼男くん。』
以前閻魔が言った言葉が鬼男の想いを邪魔する。
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