日和

□呵責。
1ページ/3ページ






「ねえお願い、優しくしないで。」










-呵責。-










「う、っぐ、ぁ…っや、やめ…」





仕事が終わり、薄暗くなった裁きの間に、閻魔の声が響く。





「大王、うるさいですよ。そもそも、優しくしないでと言ったのはあんたの方でしょう?」



鬼男は後ろ手に縛られ床に転がる閻魔を冷たく見下ろした。





「っふ、そ、だけど……っぁああ"ッ」





「口答えはやめて下さい。むかつく。もっとひどくされたいんですか。」






服を剥かれ、露になっていた腹にざく、と爪を刺す。爪が刺さった箇所からは白い肌を汚すように紅い血が溢れた。




「ッ、うああ"ぁああ"ぁっ」


「…あは、紅、似合ってますよ。大王様。」





腹から爪を引き抜き、にこりと微笑みながら言う。








「あ、すごいもう治ってきてる。あんたほんと回復力だけはすごいですね。」













「何の役にも立たないくせに、」










鬼男が冷たくそう吐き捨てると、閻魔は血と同じ紅の目に涙を溜め、謝罪を口にする。












「っ、ご、めんな、さ…っ、う、」









「何、泣いてるんですか。」




そう言いながら、鬼男も顔を歪ませる。





しかしそれはもう、閻魔の目には映っていなかった。





どこを見ているのか分からない虚ろな目で、只、謝罪の言葉だけを繰り返している。








(いつまで、大王にこんな酷いことしなきゃなんないんだろう。)








閻魔の血が付いた手で頭を抱え、鬼男も静かに泣いていた。














(抱きしめたい、泣かせたくない、苦しめたくない、)









でも、









『救いなんて俺にはいらないんだよ、鬼男くん。』











以前閻魔が言った言葉が鬼男の想いを邪魔する。








.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ