日和
□堕ちる。
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この人が何をしたというのか、
-堕ちる。-
暗く、殺風景で、血生臭い地獄。
懐かしいその場所に、鬼男は立っていた。
岩影の向こうには、血と涙と、白濁した精液でぐちゃぐちゃになった閻魔が横たわっている。
―2時間前。
地獄へ続く穴の前で、鬼男と閻魔は言い争っていた。
「だから、貴方ひとりが罰を受けるのはおかしいと言っているんです!」
「おかしくないよ!鬼男くんはただの秘書なんだから、罰を受ける必要なんてないの!!」
「そうだとしても…」
昨日閻魔の背中にひどい傷跡を見つけた。
聞けば罰を受けた際に鬼に付けられた傷だと言う。
閻魔は、明日には治っていると笑っていたが、鬼男はそれを放ってはおけなかった。
「とにかく、鬼男くんは絶対来ちゃだめだからね!」
言うが早いか、閻魔はひとりでさっさと地獄へ行ってしまった。
ご丁寧に札で穴に結界を張って。
(大王だって、好きで人間を裁いているわけじゃないのに、)
義務付けられている罰に腹立たしさを感じつつ、札に手を伸ばした。
「っ…」
札に触れた途端、手にばちばちという音と共に激痛が走る。
しかしそれに構わず、一気に札を剥がした。
すっと結界が消えるのを確認すると、閻魔の後を追った。
そうして見たのがその無惨な光景。
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