日和

□いやもの
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壊して請わして、











-いやもの-













いやだ、いたい、鬼男くん

先程から大王から吐き出される言葉はそのみっつと悲鳴じみた嬌声だけ。
でも嫌よ嫌よも好きのうちってことで聞く耳なんてもちません。そもそも大王だって本当に嫌なわけじゃないんだから。あ、これは決して独り善がりの妄想なんかじゃないですからね、前にちゃんと告白はしましたよ恥ずか死ねる程ロマンチックな雰囲気作って。
反応は上々、なのに彼が頭を縦に振るには彼の背負っているものが余りにも大きすぎた。死を司る冥府の王、閻魔羅闍ともなれば秘書といえど一介の獄卒からの告白を二つ返事で了承できるような立場ではなく。
悩んだ末彼の返事はごめんね鬼男くんと涙ながらの一言だった。
片想い中に散々悩んだ身分の差はやはり下界の物語のように軽視できるものではない。

しかしそこで言葉というものが役立つわけで。

つまりはお互いが好き合っていなれば問題ない。嫌。その言葉があれば甘い恋人同士の情事も獄卒からの酷い強姦へと変わる。
なんて名案が浮かんだら即実行。その日から大王のうけるみっつの罰のうちひとつが僕からの強姦に代わった。
にこにこと爽やかな笑顔でそれを報告しに行くと大王もぎこちなくも笑顔で受け入れてくれた。よかった、僕ら結ばれるんですよ。誰にも公言できないし、誰からも祝福はされないけれど、そんなもの必要ないですよね。だって大切なのはお互いの気持ちですから。
そんなわけで今日も罰という名の愛の営みが行われるわけです。キスして、触れて、繋がって。言葉で拒否されるのが悲しいけれどそれは仕方のないことだと割り切ります。愛しさを込めて名を呼び腰を進めます。

貴方は強いから、本当に嫌なら力ずくで僕を押しのけられるでしょう?だから僕は安心して貴方の嫌を聞くことができるんですよ。ねえ大王、大王、だから泣かないで下さい。いくら演技とはいえ僕まで悲しくなってきます、ねえ。ごめんねって、なんで謝るんですか、大王は許しを請わなければならないことなんてひとつもありませんよ。大王大王大王大王、
























気が付くとごめんなさいと煩い大王の口を自分の口で塞いでいた。久方ぶりの大王の口内は想像していたよりもずっと冷たくて、僕は掻き消すように舌を絡めた。


















-いやもの


見落としていたものは、
多分もう一生戻らない








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