日和
□狂愛
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愛してるんです。だから、当然のこと、ですよね?
-狂愛-
ハリスが襖に手をかけるとふわりと生々しい鉄の匂いがした。
大体何が起きているか予想がつき視線を部屋の奥へやると、そこには予想通り赤に濡れた通訳が、いつものように足をくずしてぺたんと座っていた。
「はあ、…またやったのかい、ヒュースケン君…」
名を呼ばれたことに気付いた彼はお帰りなさい、とその状況に似つかわしくない程綺麗に微笑む。
ハリスはもう一度盛大にため息をつくと、血の匂いが外に漏れないようぱしんと襖を閉め血溜まりへと足を進めた。
「まったく…今日は何処をやったんだ」
頭から足先まで一通り目をやるが服が赤く染まっていて何処に傷があるか特定できない。
仕方無しにワイシャツの釦に手をかける。右手に持っていた恐らくこの傷をつけた凶器であろう小刀を横へ避けるのも忘れてはならない。
「…ふふ、ハリスさん、」
ハリスがよっつ目の釦を外し終えたところで頭上から女の子のような笑い声が小さく聞こえてきた。
「なんだい、ヒュースケン君」
ハリスは視線は手元のままにヒュースケンに返事を返す。呼ばれた理由はわかっている。大方付き合い始めの恋人のような恥ずかしい台詞だ。
「…呼んでみただけです。」
ほうら。予想的中だ。
その間に釦を全て外しシャツから腕を抜き去り脱がせる。
さて傷は何処だと詮索を始めるとヒュースケンはこことここと…ここです、と自ら傷の在りかを指摘した。
指差したのは左腕と右足と左胸。
ハリスは数秒傷を眺めると救急箱取って来るからまってなさい、と立ち上がった。
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