日和
□堕ちる。
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正直、その光景を見るまでは、閻魔を助けられるのではないかと思っていた。
地獄に入り、閻魔を探している間、ずっと閻魔を守りたいと思っていた。
(…、自惚れだ。)
目の前で繰り広げられる酷い行為を、鬼男は岩影から見ることしかできない。
十数の鬼が、閻魔を取り囲み、すき放題にしていた。
殴る蹴る、時には刺すという暴力を奮う者。
耳元で言葉を吹き込み、精神的に追い詰める者。
中には性欲処理に使う者も居た。
閻魔は虚ろな目でされるがままになっている。
鬼男は頬に涙が伝うのを感じながら、己の無力を呪った。
「ああ"っ、ッ、」
閻魔の声にはっと気を取り戻す。
見ると閻魔はひとりの鬼に犯されていた。
あ、あ、あ、と規則正しく洩れる、閻魔の悲鳴とも嬌声ともわからない声を耳にした途端、突然鬼男は激しい頭痛に襲われた。
「ッ、なんだ…これ…っ」
目の前がぐらりと揺れ、鬼男は膝をついた。
頭の中がぐるぐると掻き回されるような感覚。
頭を抱えその感覚に耐えていると、いくつかの光景が写真のように浮かび上がる。
頭痛が止むと、鬼男はすぐさま立ち上がり自室へと走った。
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