日和
□だいきらい
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「鬼男くん?」
「え、」
名前を呼ばれて前を向くとすぐ目の前に閻魔の顔があった。
「ち、近い!!」
ざくっといつものように爪を伸ばし閻魔と距離をとる。
「痛い痛い!鬼男くん爪!刺さってる刺さってる!!」
「刺してるんです!!」
ひーひーと情けない声を上げる閻魔を仕方無しに解放すれば、間髪入れずに不満の声が降ってくる。
「この辛辣鬼!ちょっと顔近づけただけじゃん!」
その言葉にぶちん、と理性が切れた。
「うっせえな!アンタのそういう馴れ馴れしいのが嫌いなんだよ!!」
「え?」
「あ。」
(言ってしまった!!)
さあっと鬼男の顔が青ざめる。
閻魔はきょとんとした顔で鬼男を見つめている。
「…鬼男くん、俺のこと嫌いなの?」
「……いえ、…煌めいていると。」
「嘘じゃん!今絶対嫌いって言ったじゃん!」
いくら変態だイカだと罵っていても、いつものそれには冗談が交じっていた。
だが今回のは本気で悪意のみの言葉。
それを感じとれないほど閻魔も鈍感ではない。
「ふーん。そっかそっか、鬼男くんそんなに俺のこと嫌いかー」
「っ…」
からかうように言う閻魔。よほど嫌な笑みを浮かべているだろうと視線を向けると、閻魔の表情は鬼男の想像とは全く違うものだった。
「何が、そんなに嬉しいんですか。」
閻魔は幸せそうに笑っていた。
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