NoBoDy'S
□歌姫の処刑台・前編
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まあ、そんなことよりも。
「水・・・。水が欲しい・・・」
体が水分を欲している。喉がからからだ。
ついでに言うと
ぐきゅるるるるる・・・
腹から特大の情けない音まで発せられる始末。
「ああ・・・腹減った・・・」
よだれが出てくるが、それと同時に先ほどよりも腹の虫が鳴くを通り越して泣き叫んでいる。
金はあるのに今はただの紙と金属だ。
「ここで野たれ死ぬとか最悪だろ。つか、なんで誰も通らねぇんだよ・・・」
2,3時間ここにいるが人ひとり通らないってどういうことだ。
それどころか生き物すら見かけないのは何故?
「マジでどーっすかな・・・んあ?」
遠くから砂煙をあげて何かが向かってくる。あれは。
「車!!?」
トラックのようだ。とにかくあれを止めないと野たれ死に大決定。
「よっしゃあ!!オレついてんじゃん!!おおーいそこのトラックー!止まって・・・・・・って、あ?」
ブ、ブゥゥウウウウ!!!
響き渡るクラクションの音とともにオレに突っ込んでくるトラック。
嘘だろ?
「ぎゃあああああああああ!?」
キキィィィィィイイ・・・!!
耳に突き刺さるような音をたててトラックは目の前で止まった。ぎりぎりで。
ヤバかった。冷や汗だらだらだ。
目の前で止まっているトラックを凝視していると、トラックから無精ひげを生やした男が顔を出した。
「おい、じぃさん。んなとこで突っ立てると引いちまう・・・って、ん?」
「・・・じぃさん・・・だと・・・?」
今、オレのこと“じぃさん”つったか?
確かにこの髪は銀色でへたすりゃ白髪にも見えるが、オレは15歳。じじぃ呼ばわりされる年ではない。ましてや、自分より年上に。
「おい、こらおっさん!オレはじじぃじゃねぇ!!!まだ、ぴっちぴちの15歳だっての!!」
いや、“ぴっちぴち”ってのは死語か・・・。
「おう、今気がついた。わりぃ」
二カッと笑いながら謝罪してくるおっさんはどうやら気さくな性格のようだ。
腹の底から息を吐き出すと再び腹の虫の悲鳴が聞こえてくる。
ああ、腹減った・・・。
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