パンドラハーツ
□クリスマスの後日談
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――――後日談★
※※※※※※※※※※※
『ギルバートくーんっ♪』
『Σなっ……!!!!ブレイク!?』
ギルバートの部屋の棚からいきなり出てきたブレイクに驚きケーキのスポンジを落としそうになる。クリスマスの日に作れなかったチョコレートケーキを作っている最中だったギルバートは乱入者を睨むとため息をついた。
―――あ,危なかった……,
まだ心臓がバクバクするのを押さえつつテーブルに一旦スポンジを避難させる。
『フフ♪いい香りがしたから寄らせてもらいましたよ〜♪♪♪』
スポンジにもチョコレートが入っているらしくカカオの甘い香りが部屋に漂う。
『おっ…,お前が変な所から出るから危うく落としそうになったぞ!普通にドアから入って来い!!!』
『そんなことより早くチョコレート塗ってくださいヨォ〜♪』
ギルバートの言うことを両手で耳を塞ぎやり過ごすとまだほのかに湯気が出ているスポンジを指差した。
『――っ〜〜!!!今塗るから待ってろ!!!』
ボウルの中のチョコレートホイップクリームを手際よくかき混ぜているギルバートに苦笑しつつ自分はちゃっかり紅茶を頂き『………ゆっくりとした時間ですネェ』と感想をもらせば『お前限定でな!』と怒鳴られてしまった。
冬の気まぐれなのか,気持ちの良い日差しが部屋を暖める。こんなゆっくりとした休日は久々でブレイクは嬉しくなった。
『本っっ当ギルバート君のくせに作るの上手いし美味いんですよね♪楽しみだねエミリー♪♪』
『ヘタレのくせにな!!!』
その誉めているのかけなしているのか判らない会話を胸の中で突っ込みをいれつつスポンジを見る。
よし,良い感じに冷めたな。
ヘラでボウルの中のチョコレートホイップクリームを多めにとりスポンジの下の皿を器用に回しそれを側面に塗っていく。
『おお〜!』と目を丸くして興味深そうに見るブレイクに思わず笑ってしまった。
コイツは食べる専門だから,今まで作る過程なんか見るの初めてなのかも知れないな……。
――――ブレイクにどんな過去があるのか知らないし,不用意に触れたりしてはいけないと思っていた。だからクリスマスの日にブレイクが自分から昔の主の娘のことを語りだしたことに驚き,自分のことを少し信頼してくれたように思えたのだ。
利用してされているだけの関係
もしかしたら,信用しあえるんじゃないかと…ふとチョコレートホイップクリームをスポンジの表面に塗りながら思った。
『レイブ〜ン!お茶なくなっちゃいましたぁ,お茶いれてくださいヨォ,』
『そんくらい自分で淹れろ!』
『淹れろヘタレー★』
―――〜……コイツはっ!!!
俺が今ケーキ作りで手一杯なのは一目瞭然なのにっ……!,
信用し合える已然の問題かもしれない……。
彼は道化師の様に
人々を笑わせるだけ
彼は道化師の如く
人々を惑わせるだけ
――決して信用してはいけない―――.
『………ギルバート君?』
はっとする。どうやら手が止まっていたみたいだ。しばらくそのまま停止していた俺をブレイクは不信に思ったらしく『どうしたんですカ?』と聞いてきた。