パンドラハーツ
□愛の輪郭
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『ブレイク!』
ふ
と
身体が覚醒する感覚。ぱちりと目が覚める。
呼ばれた方向から足音が聞こえた。此処に来るのか。
愛しい声。
はらはらと泣き出しそうな声で何度も何度もワタシの名を呼んで
此処まで一生懸命に駆けて来たのだろう、調わない息、君の震えた声を頼りに頬へと手を伸ばした。
『っ…ブレ…ク、ザクス…兄さん…ザクス兄さんっ…うぅ…兄さ、ん』
【お別れだなんて】
一瞬にして全てを悟った君の言葉。
ワタシの手を握り返す君の手が冷たくて、さめざめとした君の手が妙に懐かしくて。
この小さな手をいつも暖めていたのはワタシだった。
『お願い、…逝かないで』
遂に泣き出してしまった君、
涙がぽたぽたと下へと伝う。
『……あぁ、泣かない、で…シャロン、』
泣かないで欲しくて、絞り出した声、君に届いたでしょうか?
笑顔が見たい
笑顔が見たいんだ
『笑って…笑って下さい、よ』
『……っ!』
酷なことを言っている
ワタシはもう上手く笑えないから
君にそれを課しているのか。
『ねぇ…笑って?』
暫くしてはらはらと降っていた涙が止んだ。
君が笑うと周りの空気まで清んでいくから。
その輪郭を縁取れば
ワタシにも見える気がしたんだ
【笑顔が】
ほら、空気が変わった、
心が宙に浮いたように軽くなっていく。
あ
…今、君が笑った。
【ありがとうとさよなら】
ねぇ、私達また逢えるでしょう?
【愛の輪郭】
end.