シリーズ
□僕の大事な、友へ。
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島に着いて倒れた僕は、気が付くと見慣れた自分の部屋に寝かされていた。
左手の甲にある違和感はなんだろうと見れば、そこには点滴の針が刺さっていて、そこから長い管が続いていた。
「…目ぇ、覚めたか?」
『…キッ…ド…』
声のした方を見れば、安堵の表情を浮かべたキッドがベッドサイドの椅子に腰掛けていた。
僕が目覚めるのを、待っていてくれたのだろうか。
『…キッド、ごめん…心配かけた…』
「全くだ」
にこりと笑ったつもりだけど、本当にちゃんと笑えていたのか自信はない。
今回の出来事はつまり、僕に残された時間がほんの僅かだということ。
キッド達と一緒にいられるのも、あと僅か…。
『…なあ、キッド』
「なんだ?」
『僕、桜が見たい』
僕はまだ時間が残っている内に、みんなと思い出が作りたかった。
そんな僕の気持ちを読み取ったキッドは、また倒れるつもりか、などと言いながらも地図を広げて、桜のある島を探し始めてくれた。
『ありがとう、キッド』
「仕方ねぇな」
この部屋にキラーの足跡が近付いてきている。
きっと後もう少しで扉が開かれて、入ってきたキラーは、次の行き先をキッドから聞くんだろう。
そしてキラーもまた、僕の気持ちを読み取るんだろうな。
最後の、我が儘
(これが最後の僕の我が儘。だから、どうか僕の体よ、それまでもってくれ)
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