-詩-

□神
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きっと君は
僕がここで声をあげていることも知らない
生と死のあいだで
細かく速く振動する細胞が
悲鳴をあげていることを知らない
遠い恍惚の
その果てで

僕が遥かな心の裏側で
瞬間を手に入れていたとき
僕は君のなかに溢れるいくつものいのちの
崩れ去る音を同時に聞いていた
震えるちいさなか弱い生きものが
僕の透明な薄い皮膚のしたで
幾千ものひだを作りながら
ひしめき合うのを感じながら

気づけば僕は
断崖の淵に立っていた
君が導いた遠い光の果てに
闇よりも暗い底知れぬ深淵が
一瞬にして現れ
僕の足もとを真っ暗に消し去った
それは
君のなかにいる
見たことのない
大きくて果てしない虚無と絶望のかたちをした

すべてだった

君は知っているのかい
君のなかにいる神を
君は知っていたのかい
その真っ暗な快楽の果てに広がる無を

僕は見ていた
強大な力の前に跪きながら
君のなかに溢れるいくつものいのちが
息も絶え絶えに
崩れ去る音を聞きながら

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