短編

□01.
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目と目を合わせて
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「好き。」


一瞬にして俺の思考は停止した。


俺達はいつもの様に屋上へきて弁当を広げそれを食べていた。

何気ない会話を何回か繰り返し、ポツンと会話が途切れたところで、隣に座っていたお前がいきなり俺の前に座り込んで、潤んだ大きなオレンジの瞳を上目使いに見上げてきて、言ったんだ。

あの言葉を。

いきなりの告白?

って言うかお前・・・蓬生の事が好きだったんじゃないのか?

俺の事好きだなんて、そんな素振り一度だって見せた事なかったじゃないか!?

何かあると何時も「ほーちゃん」「ほーちゃん」で。

いつも口うるさくあーだこーだ俺が言うから、どちらかって言うと嫌われてんじゃないかって、そう不安に思った事だってあるんだ。

何だ?

今日たまたま蓬生がこの場に居なくて、2人っきりだから思い切って告白してみました的な展開なのか?

俺だって別にお前の事嫌いって訳じゃないし、どちらかって言うと・・・す・・・好きだったりするんだが・・・。

まて!

蓬生にどう説明すんだ!

あいつは完璧にお前にベタ惚れなんだぞ!

幼馴染同士の三角関係とか、そんな今時のドラマでも扱わなそうな展開俺は望んでない!

待てよ。
つまり、俺は断ればいいのか?

断る!?

こんなおいしい展開を断る!?

って待て俺。
落ち着け、まずは落ち着こう。

冷静に・・・。
冷静に・・・・・。


「って感じで好きって言われたら好きになってくれるかな?どう思う、千秋。」


どう、思う?


「あのね、この本に相手の目を見つめて告白するのがベスト、って書いてあったんだけどね。本当かなって。」


つまり何だ。俺で試した・・・と?


「でもほうちゃんには無理っぽい。目と目合わせてなんて恥ずかしいよぉ。絶対何も言えなくなっちゃう・・・千秋なら平気だけど。」


俺なら平気?


「ねぇ?聞いてるの千秋!」


瞬間冷凍よろしく一瞬で凍りついた俺の心は、遠慮なく叩きつけられた10トンハンマーで粉々にされ、更に踏みつけられるという今までにない屈辱を味わった気がした。

そうだよな・・・。
お前ってそう言うキャラだよな。

ある意味ホッとしたような、残念のような、そんな複雑な気持ちになったが、目の前でニコニコ笑うお前を見ていると不思議と安心感で満たされていく。

何も言わない俺に、気まずさを感じたのか、ジッと見つめていた視線がよそよそしく横に流れる。


「俺を見ろよ。」


マシュマロみたいな白くて、柔らかいお前の頬に両手を添えて流れる視線を俺に戻す。

やられたらやり返す。

それだけだ。


「好きだ。」


大きなオレンジの目をジッと見つめて俺が言うと、みるみるうちに顔が赤くなっていく。


「どうだ?」


「すっっっごい威力だね。」


「だろ?」


その時入口のドアが開く音が聞こえた。


「何、2人して見つめ合っとんの?」


予想通り現れた蓬生に、慌てて俺から離れていくお前。


「な・・・なんでもない!ねぇ、千秋!!」


「ほら、予行練習は済んだんだ。早くやれよ。」


「できるわけないでしょ!バカ!!」



これはこれで。

役得か?

なんてな。




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振り回される千秋が好き。


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