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□蓮歴記
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 「失礼します」



コンコンと校長室のドアを叩く。

・・・なんかすごいきれいな音したんだけど。

いや、なんていうか、普通のドアの素材じゃないよね?これ。



 「あ、光くん?」

 「はい。あの・・・」

 「分かっているよ。奏人のことだろう?」



・・・呼び捨て?

身分的には間違ってはいないが校長が生徒を呼び捨てって・・・

イメージダウンなのだが。



 「・・・よくわかりましたね」

 「だってあれじゃないか。君なら不良の彼のことについて聞きに来ると思ったから」



・・・やっぱ不良なんだ。

というか俺が聞きに来たのは彼の学習用具の有無なのだが。



 「えと・・・社妓くんは勉強道具・・・教科書はあるんでしょうか?」

 「ないわけないだろう」



あ、そうだよね。



 「それならよかったです。では失礼しました」

「おいおい。それだけなのかい?」



校長先生は拍子抜けとも言うような声で言う。



「はぁ・・・?そうですが?」

 「なんで登校してなかったとか聞かないのかね」


めんどくさいですしそんな気は起きませんでした。

・・・言えるはずもなく。



 「校長先生はお知りにならないのかと。」

 「知らないわけないだろう。あれは俺の孫だからな」



・・・はい?


孫?とおっしゃいました?



 「孫、ですか・・・」

 「おう。できの悪い野郎だがな。血を分けてはいる。」



校長先生が不機嫌そうに机をつつく。

・・・ああ。


校長先生と社妓はきっとそんなに仲むつまじくなく、顔を合わせたくなかったから登校しなかったとかそういうことなのだろう。
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