□春風駘蕩36
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降ろされた場所はどこかのお屋敷みたいで、広い庭には大きな池がある。


ちょっと深呼吸…


立ち上がり、大きく息を吸う。


『んぎゃ!!』


溜めた息を吐こうとした瞬間、身体の自由が奪われた。


『な、なんじゃこりゃああ!!』


ロープがぐるぐると身体に絡み、身動きが取れない。

『うわっ!!』


くねくねをよじっているとバランスを崩し、背中から地面へと転げる。


い、痛い!!

地味に痛い!!


芋虫のように地面を転がっているとさっきの女が、紅く染まる空を背景に顔を出してきた。


『ちょっとぉぉおお!!酷いじゃない!!早くほどきなさい』


「………フっ!!」


……なに?なんか鼻で笑われたんだけど。

ものすごく見下されたような…

たいしたことねーな。みたいな?


『何が可笑しいのよ!!いいからほどけぇぇええ!!』


顔を赤くしながら必死に身体を捩る。


「約束したら解放するわ」


『や、約束?』


「そう……銀さんの前から消えなさい!!」


『……は?』


「あなた、何様のつもりか知らないけど…銀さんは私の男よぉぉお!!」


般若のような顔をしながら髪を逆立てる。


『…はぁ、』


えっと、銀さんの彼女…


「なに、その反応!!」


『いや、…あ、でも別にあたし、銀さんと特別な関係でもないんで』


「ふん!!猫ババ決め込むなんて…とんだ悪女ね」


『いや、猫ババって…あたしはただの万事屋の非常勤みたいなやつですから』


なにこの人、なんでこんな激しいの?

あぁもう面倒くさい。


「銀さんと私はね、物凄い濃厚な仲なのよ!?あんなこともこんなことも全部やったんだから!!」


『そうですか…じゃあ、あのもう帰りたいんで離してくれません?』


こういうのは適当に聞き流した方が得策ね。



「さっきまでアンアン喘いでたくせに、今度はツン?アンツンなの!?」

『言ってないから!!なにそのツンデレみたいなの!』
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