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□春風駘蕩31
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「きったねーっ!!」
「近づくなよ!!」
『やめてよ、痛い!』
大小バラバラの石をあたしに向けて投げる。
痛くて踞っても、それは止まない。
「母ちゃん言ってたぞ!!ハエみたいに死体の山に近づいてるやつは悪い者だって!」
「ハエだってよ!!はは」
「悪い奴はやっつけてやるぞ!!」
まさに四面楚歌。
誰も助けてはくれない。
『やめて!!』
「っるせー!!」
ゴツンと鈍い音と共に頭に痛みが走る。
『痛っ…』
ツー…と目の横に生暖かい物が通った。
あたしが悪いの?
あたしは汚いの?
「おい、」
「なんだテメェ!」
「消えな、クソ餓鬼共が」
「なんだとコラ!!」
一瞬だった。
懐から鈍く輝く刀を抜くとそれを子供たちに向ける。
「聴こえなかったか?消えな」
「「「ひ、ひぇぇえ!!」」」
さっきまであたしを虐めていた子供たちが一目散に逃げ出すのを見て呆気にとられていると"スッ…"と目の前に手のひらが差し出された。
『あ、ありがとう』
手を掴んでそっと立ち上がる。
「大丈夫か?」
『うん。お兄ちゃん、誰?』
「俺は―……」
ジリリリリ!!
『は!!…またあの夢。最近同じような夢ばっかだな』
目覚ましの音に飛び起きて、さっきの夢の続きを思い出す。
あれはあたしが小さい時の…
くそう、あの時助けてくれた男の人の顔が思い出せない…名前も覚えてない。
誰だったか…
『ぎゃああ!!こんなことしてる場合じゃないわ!今日は朝イチで重要な会議があるんだった!!』