□春風駘蕩33
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『んぅ…よく寝た』


あぁそうだ晋助の胸の中で寝ちゃったんだっけ。


で、ここはどこなんだろう。


寝かされていた布団から出て高級旅館を思わせる造りの部屋を彷徨く。


あれ、ドア…開いてるじゃん。


前みたいに拘束されているわけでもなもないし、出てもいいのかな。


いや!もし勝手なことしたらあの女の人に撃たれそう…


うーんでも、誰もいないし。


ちょっとだけならいいよね…


外にでるとふわりと潮風が薫った。


やっぱりここって船の中だよね。


「春風ななこか?」


『え!?』


うっそ!
ヤバい見つかった!?
驚いて振り替えるとヘッドフォンをした男の人が立っていた。


『えぇと、すみませんでしたぁぁぁああ!!命だけは、命だけは!お助けをぉぉおお!!』


土下座をしながら命乞いをする。


こうすれば低体の人は許してくれる!…はず!!


「そんなところに座っていたら汚れるでござるよ」


『え、あ、はい』


差し出された手に捕まり体を起こす。


あれ?どういうことだろう。

拍子抜け…


『あの、私、逃げる途中だったかもしれないのにいいんですか?』


「さぁ」


さぁって…


あたしを拉致してきたのはそっちでしょうが。


「お主…ここで一曲歌ってくれないか?」


『…は』


すみません、話が随分と飛んだんですけど。


え、ていうかなに?一曲?
え、なに、歌うの?


「無理か?」


『はい』


「なら仕方ない、斬らせてもらうでござるよ」


「はぁ…ってうわぁぁああ!!」


いきなり背中に背負ったギターから刀を取り出すとあたし目掛けて振りかぶってきた。


『(死ぬ!!)すみません!!うう歌いますぅぅぅ!!』


「そうか、楽しみでござるな」


あ、助かった。
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