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□春風駘蕩42
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「ふーんふんふん♪やっぱりいいなぁ、あぁ早く君を使ってみたいよ」
新品のミントンラケットを優しくさする。
こいつとの出会いはデパートの中だった。
ショーウインドウに飾られてたこいつに一瞬にして目を奪われたのだ。
美しい、そう思った。
早速手に持って見ればまるで俺と一緒にずっと戦ってきた感覚に陥るくらいしっくりとくる。
もう買うしかないと、銀行から給料を引き落として買ったのだ。
「俺ら運命で結ばれてるのかな?なーんちゃって!」
軽く素振りをして、風を切る。
「ふん!!ふん!!ふん!!」
あぁやっぱりだ!俺の目に狂いはなかった。
「ふん!!」
スポーン!!
「あっやべ」
つい調子にのって大きく振りかぶったら手が滑ってラケットが飛んでいってしまった。
スパコーン!!
運悪くラケットは誰かの頭をめがけてぶつかった。
「す、すみません!!大丈夫です……か…?」
「痛ぇ」
「ふ、副長!?」
「山崎ィ、上司に向かってラケット投げるたぁいい度胸じゃねーか?あ"ぁんっ!?」
ボキッと嫌な音が空に響く。
あぁ嘘だろ?
目の前で真っ二つに分かれたラケットは地面に落ちていく。
スローモーションのように思われた。
「あああああああ!!なんてことを…どうして折るんですか!!ひどいですよ!!」
「なんでってむかつくからに決まってんだろうがぁぁあああ!!」
「ぎゃああああああ!!」