□春風駘蕩32
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『ギャアアア!!なななんてことすんですかぁぁああ!!ちょっとでも動いてたら死んでましたよ!!』


「そんなミスするとでも思ってるんスか」


目の前に現れたおへそをだしたセクシーな女性はずいぶんと自信ありげだ。

…下手に逆らわない方がいいかも。


また子さんだか、たま子さんだか知らんけど、両手以外の拘束を解かれたあたしは銃を突き付けられながら廊下を歩く。


あたしが監禁されていた部屋や廊下を見ると、ただの家屋ではないみたい。


異様にふわふわしたような……船?


「ここッス」


そう言って案内されたのは、月が紅く輝くオープンデッキだった。


銃口で背中を押され、その先端に立っている人影に恐る恐る近づく。


後数歩という距離まで縮めると男が振り返った。


「よぉ、元気だったか?ななこ…」


『……?』


華やかな着物を着崩し、キセルをふかす男はどこか見覚えがあった。


でも、なにか違う。


片方の目は痛々しく包帯が巻かれていて、もう一つはまるで獣のように鋭くあたしを見据えている。


「忘れたのか?」


忘れてない。


「俺は…」
「俺は…」


不意に記憶が重なった。


『晋…助…?』


「フッ…覚えてんじゃねぇか」


思い出した。


そうだ、この人は高杉晋助。

幼い頃にあたしを助けてくれた。
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